真のコンサルタントを志向するために必要なこと

コンサルタントというキャリアの上では、上質な臨床経験をいかに積み上げるのかが非常に重要だと改めて感じる。
思考や問題解決の手法といったハードスキルについては当然必要なのだが、最近ではそれらにフォーカスされ過ぎている印象を受ける。
ハードスキルは必要条件であって、特に「戦略コンサルタント」においては十分条件もしくは差別化要素とはなり辛い。

そもそも、ハードスキルだけでは解決できないからこそ、高額な外部アドバイザーを求めているのだと思う。
本来的なコンサルタントとしての力の差は、臨床経験を踏まえた組織に対する洞察の蓄積によって生じると考えている。

この臨床経験は、経営全般に亘る幅広さが必要だと思う。
特定領域の個別経験だけでは、企業という複雑な有機体の問題の真因を突くことは難しい。
戦略、組織、業務、制度・インフラあるいは営業、生産、開発、人事、財務、経理、情報システム・・・等々。様々な領域の様々なレイヤーでの経験を積んで初めて、企業の中で何が起こっているのかを掴めるようになる。

コンサルタントは医師に例えられることが多いが、少なくとも戦略コンサルタントは例えば脳外科医といった専門医ではないし、加えて言えば、そもそも外科医ではない。手を動かして解決することはできない。

医師との決定的な違いは、医師は患者と決定的な情報の非対称性が有る一方で、コンサルタントと顧客企業の間にそれは無い。
顧客企業自身がある程度の自己治癒能力、もしくは自分自身で外科手術をするスキルを持っている中で、「なぜ今の症状が生じていて、それに対してどこをどのように変えるべきなのか」をピンポイントで突かなければならない。

現在、多くのファームのキャリアの延長線上に、真の「経営コンサルタント」は存在しないと思っている。(「『戦略』コンサルタント」ではなく、敢えて表現を変えた)
個別課題へのサービス提供者に過ぎない。特定の「商品」が有り、それを求める企業に売って行くというもの。
そのため、幅広い臨床経験を積むということが極めて難しい。

「顧客課題の解決」と謳われているものの、結局は「こんな感じのもの有る?」と聞かれたことに対して、並んでいる商品の中から適したものを探して「これでどうですか?」と応える。
更には、「こんな商品いかがですか?」と売り込みをかけ、断られれば「また今度お願いします」と去る。

本来であれば、ファームトータルで真の「経営コンサルタント」の役割を果たせれば良いと思う。アカウント単位でしっかりと経営課題を捉え、社内のリソースを上手く選別・統合して解決を図る、といったような形。

体裁的には多くのファームでこういったことは謳われているが、実際にプロフェッショナルアドバイザーというレベルでサービス統合が出来ているファームは無い。
求められている収益拡大のスピードであったり生産性の水準を踏まえると、これらを本気でやったら成り立たない。

コンサルティングファームはコンサルタントから既に大きく離れ、かなり明確な商品を持ち、それを営業・生産する会社になっている。
これは問題ではなく、ビジネスとして、特に株式上場しているファームなどは至極当然の道。

しかし、少なくとも「プロフェッショナルファーム」ではなくなっている。

真の意味でのプロフェッショナルたるコンサルタントを志向するのであれば、早い段階でキャリアを築く場を変えた方が良いと思うし、稼ぎ方も変えないと通用しない時代になって来ていると感じる。

・・・と、自分自身のキャリアを考えながら思っていることを徒然と。

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