案件に入る段階で知識が無いと成り立たない

コンサルの仕事においてはかなり広範な知識が求められる。専門領域に特化したある程度シニアなコンサルについてはその領域の深掘りだけで通用する場合も有るが、少なくとも若手のうちは常に新しい知識が求められると考えた方が良いと思う。

プロジェクトの中で知識不足が露見した場合に多く聞く理由は「これまで、このテーマの案件をやったことが無かったから」というもの。
案件の中で知識を習得するということが前提になっている理由だが、この発想だと厳しいと思う。

この発想だと、当該テーマに最初にアサインされた場合には、案件期間が「お勉強期間」になってしまう。顧客は当然、コンサルファームのお勉強のためにフィーを支払うなど有り得ないし、ファームとしてもそのような認識はない。勿論、その領域での経験の蓄積によって得られる洞察なども有り、それらは数多くの案件経験を積むことで可能となる。
しかし、例えばバリュエーション案件の際にDCFの基本公式も知らずに臨んで来るケースが有る。「やったことが無いので全く知りません」ということを当然のような顔で発する。
課題図書は指示しているので「ちゃんと事前に勉強した?」と聞くと「いやぁ、色々と忙しくて・・・」という感じ。

コンサルの知識の中で必要条件となる知識はかなり多い。戦略論、マーケティング(4Pって何?というレベルでマーケティング案件のキックオフに臨む人も居る)、ファイナンス等々、それぞれの領域で基本レベルとして「これを知らないと案件の中で会話が成り立たない」というものは、早い段階で習得しないとまずい。
一方で十分条件は(あくまでもコンサルレベルでの)専門家として差別化ができるレベルのもので、これはキャリアを通じて磨け上げるもの。

必要条件については教科書的な書籍を数冊読めば(本当に最低限の部分は)得られる。少し応用的なもの(これは案件によって読むべき本が異なるが)を含めて5冊程度。この位はキックオフまでに読み切っていないとまずい。急遽アサインされた場合であっても最初の週末には読み終えるレベル。
入社当初は読まなければならない「教科書」も多いので後手に回る可能性が有るが、とにかく一気にキャッチアップする。未経験領域で素早くキャッチアップする能力と言うかスキルは戦略コンサルに最も求められるスキルかも知れない。

「経営に関する知識を得るためにコンサルになる」という人も多いが、その言葉が勘違いした捉えられ方をしているようにも感じる。本を読めば得られる「経営に関する知識」をコンサルという仕事(労働時間)の中で勉強できる。このように考えている節が有る。

基本的にコンサルのキャリアは自己学習の連続。

少なくとも「こういった案件をやりたい」と主張するのであれば、その前にその案件に耐え得る知識は習得する。そのような意識で臨まないと、この業界では(最近の情勢からすると目先は何となく通用しているように錯覚するかも知れないが)厳しいと思う。

1件のコメント

  1. 本ブログの愛読者です。4月以降更新がなく寂しく思っておりましたが、久しぶりに訪れたら何件か投稿があり嬉しく思っております。

    本投稿に関して、お伺いしたいことがありコメントをさせていただきました。

    ■ 質問
     必要条件としての教科書的な本と応用的な本はどのような基準で選書することが多いのでしょうか?
     また、大量のインプットをすると、頭で整理が追いつかず、議論をする際にすぐに、覚えた知識を取り出せないことがありますがインプット時に何か工夫されていることはありますか?

    インプットしたはいいものの、あまり活用できなかったと忸怩たる思いをすることがありますので何かご示唆いただけると嬉しいです。

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