常に臨戦態勢を取る

スタッフにインタビューセッションの仕切りなどを初めて任せる際、事前にそのことを伝えず、セッション直前とか、精々、顧客のところへ向かう道中で伝えるようにしている。
「しっかりと準備する」という時間を持たせないため。

前提として、私のプロジェクトでアソシエイト以下のスタッフにそのような機会を持たせるのは、顧客との信頼が出来上がっており、かつ、そのセッションの「やり直し」が出来るような場合に限っている。それ以外の場合は、計算が出来るスタッフ以外に任せることはしない。

直前に伝えると非常に鮮明に表れるのが、「臨戦態勢を取れているか」ということ。
そこを見ている。

私やプロジェクトマネジャーが仕切る場合であっても、準備にそのスタッフは関わっている(そうでなければさすがに任せない)。
もしくは、それまで同様のインタビューなどに同席している。

その際に、どの程度「本気」でその作業に取り組んでいるのか/セッションに参加しているのか。自分自身がそのセッションを仕切る立場でない場合でも、自分が「当事者」として臨んでるのか。
これが露骨に表れる。

先日、入社即日で私のプロジェクトにアサインしたスタッフに、顧客の受付まで行ってから「任せて大丈夫?」と聞いたら、当然のことのように「大丈夫です」という返答が返って来た。

やってみて、当然、上手く聞き出せないといったようなことが生じ。見ているのと実際にやってみることが違う、ということを本人も痛感し、もどかしさを感じたようだが、それは当然のこと。
こんなものは場数を経験しないと身に付かない。

少なくとも、「臨戦態勢を常に取っていた」ということはしっかりと伝わって来た。

任せた方としても、最初から上手く行くとは思っていない。この案件は顧客の信頼を完全に掴めているので多少進め方がまずくても何とかなるし、プロマネが横でしっかりとフォローしてくれている

臨戦態勢を取ることが出来ているのであれば、次回以降もやらせてみよう、という気になるし、実際にその後は全て任せている。
(フォローも完璧だったので、その後は私は同席しないか、同席してもあまり口を挟まないようにしている)

一方で、「与えられた作業だけが自分の仕事で、後はパートナーやマネジャーの仕事と考えていたんだろうな」と感じる人も少なくない。
これは、コミュニケーションの巧拙といったものではない。単に「喋り」が下手だからうまく行かないのか、他に問題が有るのかは、やり取りを聞けばすぐに分かる。
(逆に、うまく喋っているように見えるけど、セッションとしては全く駄目、ということも多い)

「臨戦態勢」は、顧客との関係性の中でも同じようなことが言えると感じている。

コンサルタントの仕事は顧客の中に生じている課題を解決することなわけだが、その課題に対する向き合い方が「他人事」として関わっているのか「本人事」のように関わっているのか。
その違いは、自分が出した提言なりに対して「じゃ、明日からうちの会社の社長になって、この実行をやってね」といきなり言われたとして、対応できるのか否か、だと思う。

スタッフを評価する際に、よく「意識」という表現が出て来る。意識が高い人、低い人。

この表現を、「成長意欲」といったことに置き換え、「意識が高い=成長意欲が強い」ということに限定して、狭く捉える人が多い。
スタッフ自身も同様に捉えており、単に「成長意欲が強い」(もしくはもっと狭く「一所懸命勉強している」)ことを持って「私はしっかりと高い意識を持って仕事に臨んでいる」という認識になっている場合が多いと感じる。

しかし、確かにそれは一側面なのだが、「意識」の中には「臨戦態勢」のようなものが占める割合が大きい。

少なくとも、コンサルファームに新卒で入社するような人の中で、「勉強をしない」などと言う人は皆無。
(但し、主体性の観点での疑問は残るが、これは今回の本題から逸れるので割愛)
一方で、この「臨戦態勢」はかなりはっきりと分かれる。当社で見ている限り、これが取れているスタッフはごく少数。

会議中に、仕切っていたマネジャーが突如「石原さとみの結婚の速報にショックを受けたので、今日は帰ります」と言って席を立ってしまっても、そのままスムーズに「それじゃ、後は私が進めます」と代わりを務められる。

この意識が必要だと思う。

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