Twitterでこんな書き込みをしたが、それに絡んで。
フェルミ推定は算数ではなく数学。
算数で重要なのは計算結果。だから計算ミスをしたら「間違い」。
数学は導出プロセスの問題。計算ミスしても及第点は貰えるが、導出ロジックが破綻したのに答えがたまたま合っても「間違い」。この違いを認識することが重要だが、分かっていない人は確かに多い。 https://t.co/i68we5upeK— 小暮 隆(仮名) (@KogureTakashi) 2020年2月26日
私が面接でフェルミ問題を使う場合、ロジックに加え、
・結果への影響度が大きい因子の中で、予測精度が低いものは何か
・その精度を高めるためにどんな手段を取るのか
を問います。
これがコンサルの頭の働かせ方の基本だと思いますので。 https://t.co/C3KFhnKlu2— 小暮 隆(仮名) (@KogureTakashi) 2020年2月26日
以前にブログ内でも面接については書いたが、それを補足する形の投稿になる。
(ちなみに、ブログを始めてまだ2か月弱だが、既に過去に何を書いたのか忘れつつあるので、ひょっとしたら他にも似たようなことを書いているかも知れない)
コンサルファームで多い「お題」は「フェルミ推定問題」と「ケース問題」。Twitterで書いたのは前者について。
基本的に2つとも評価の視点は似ている。
書いた通りに、フェルミ推定問題は「数学」であって「算数」ではない。重要視しているのは計算結果ではなく、その導出過程。
極論すれば、計算結果はどうでも良い。と言うのも、前提となる因子の置き方が少し変わるだけでかなりの違いが出る。一つ因子を忘れると一桁以上変わる。
ちなみに私が15年前位に戦略系ファームを受けた時、某社(結果として行かなかった)の面接の際に、結構影響度が大きい因子を計算に組み込むのを忘れた。
正確に言えば、試算(あるものの日本全国での数を推定する問題)の際に、それが存在するある場面を見落としていたことが要因。
これにより、結果が一桁変わった。
しかし、このファームからは内定を受けた。
当時、面談の場で
- 因子を忘れたけど、「何か忘れていないか?」という質問を受けてすぐに自分で前提を見直し気付けたので、それ自体問題無い
- 他のロジック等は完璧
- 加えて、精度に対して大きく影響する因子と、その精度を高めるための手段について的確に答えられたので、このお題についてはほぼパーフェクト
というフィードバックの言葉を頂いた。
私はこの時初めて「フェルミ推定の問題で問われていること」を理解した。(遅いが)
フェルミ推定問題でもケース問題でも、正直、最初に導き出された結論自体は「どうでも良い」程度に思っている。
重要なのはその考えに至る過程。前提の置き方、ロジックの築き方。そこをまずは見る。
しかし、この2つもあくまでも「必要条件」。これらが不十分であれば当然不合格だが、これらが出来てももう一つ見ている。
それが、初期解からの「寄せ方」と言うか「詰め方」といったもの。
フェルミ推定であれば、最初にザックリと考えたものについて、ロジックの細かな補正、影響度の大きな因子の精度の高め方等々。言ってみると「正解」に対して如何に近付けて行くのか。
そこについての議論を行い、こちら側からの意見なども踏まえ、上手く自分の考えと融合して質を昇華させられるのか。
ケース問題も同様で、最初の答えから如何に「より良い答え」に繋げるのか。
ここが重要になる。
なぜこれを重視するのかと言えば、答えは簡単で、「これが戦略コンサルタントの頭の働かせ方だから」。
戦略コンサルタントの仕事は、最初に必ず仮説を組み立てる。
これは「どこに着眼して考えを詰める必要が有るのか」を明確にするため。
仮説を組み立て、
- その中に含まれる要素(仮定)の中で何が分かっていないのか
- その中で特に結論に大きく影響する要素は何なのか
- その要素の実態を理解するために、どのようなアプローチを採るのか
といったことを考える。そして、実際に要素をしっかりと見て、置いた仮定が正しければ次に進めるし、誤っていればその仮定を正した上で仮説を組み立てなおす。
これを繰り返す。
特に経験が浅いうちは、最初の仮説の精度は低い。しかし、精度が低いこと自体は問題ではない。
重要なのは、その仮説構築・検証サイクルを高速で回すこと。
仮説はじっくりと考えて作るよりも、外していても良いからザックリと作り、早めに検証に移る。
但し、「寄せ方」・「詰め方」の能力が高くないと、一向に結論の精度が高まらなくなる。
そのため、面接でこの点を重視している。
フェルミ推定の問題に対しては「如何に精緻に出すのか」という発想は捨てた方が良い。どうせ、与えられた時間で精緻に出すと言っても限界が有る。
時間制限の中で与えられたお題の絵を描き、それが何なのかを相方が当てる、といったようなテレビでのクイズ問題が有る。
この時、「精緻に描く」ということを意識すると、例えば「ライオン」がお題の際に、脚許だけ写真と見間違うような絵を描いても、確信を持って答えることは難しいと思う。
猫でも虎でも変わらなさそうだし、そもそもライオンとラクダでどのように脚が違うのか区別が付かないような私からすると、そこを見せられても・・・と感じてしまう。
それよりも、幼稚園児が描くようなレベルの絵で良いので、タテガミをしっかりと描いて欲しい。それならライオンだとすぐ分かる。なぜなら、それがライオンと他を区別する最大の要素だから。
これと同じで、「少なくとも何が分かれば良いのか」に意識する。
「重要な因子は何なのか」。そしてそれらを四則演算でシンプルに整理した「計算式(ロジック)」。とにかくここに集中。
「シカゴのピアノ調教師の数」を出すのに、シカゴの平均所得水準は殆ど関係無い。
圧倒的に重要なのは世帯数、ピアノ保有率、調教頻度、調教師の対応可能件数という4要素だと思う。(違う計算式でも良いが)
- 調教師数(人)=世帯数(世帯)×ピアノ保有率(台/世帯)÷調教頻度(年)÷対応可能件数((台/年)/人)
これで出るはず。
(なお、数理系の人は当然のこととして行うと思うが、単位で論理チェックをする癖は付けた方が良い)
ちなみに、この時点で、例えば「世帯数」など分からなくて良い。
「シカゴの世帯数」と言われても、日本人はあまり知らないと思うし、世帯数=人口÷平均世帯人数だが、そもそも人口も知らなくて良い。こんなものはGoogleで検索すれば出て来る(すぐ分かる)。「大都市なので東京都同程度と考え、人口1,000万人と仮定し、必要であれば後でGoogleで調べます」で十分。
一方で、「年間対応可能件数」などは、Googleでもなかなか直接的な結果は出てこない(と思う)。そのため、それ自体をどのように仮定して算出するのか、が問われる。
これは因子の掘り下げ。
議論の中で、個々をしっかりと深められれば、フェルミ推定については大丈夫だと思う。(このスピードは重視するが)
しっかりとした面接官であれば、「訓練」を受けているかどうかを見極め、「資質は有るけど粗削り」という人に対しては上手く誘導すると思う。
しかし、一次面接位だと面接官も玉石混淆なので、これらを知らないで資質有る人が「能力が足りない」と落とされたら勿体無い。
知っておいた方が良いと思う。