採用する側が面接時に見ていること

私が就職活動をしていた(遥か昔の)時代と比べ、最近は就職活動がえらい早い時期に始まり大変そうだな・・・と眺めている。
また、学生側の意識も随分と高くなり、非常に良く勉強していると感じているが、それは単に私が没落した学生生活を送っていただけで、当時も一流の学生諸氏はしっかりと考えていたのかも知れない、と反省したり。

twitterを眺めていると、色々な世代・立場の人がどういう風に考えているのかなどを垣間見ることができて面白い。

その中で、コンサルの就職・転職についても色々と書かれているが、採用する側としてそれらについて思うことも有ったので、この点について書いておく。

その前提として、今、あるマネジャーに対して「面接時の判断ポイント」というものを伝えようとして早1年以上経つ。言語化できない部分が結構大きいので、マネジャーが通して来た人について私が面接した際、気になったことや、特に非通過と判断した場合の理由をフィードバックし、「感じてもらう」ということを繰り返すもの。

最後は感覚に依るものであることに加えて、ファーム内でも完全に一致した視点ではない。目線を合わせる努力はしているが、そもそも求める人材についての共通認識は無いと考えた方が良い。要するに面接する人によって視点は変わる。
(社内でも、ある人に対する評価が「使える」と「使えない」というように分かれるケースも少なくない:「凄い優秀」という人の評価が割れるケースは皆無だが)

これを前提として踏まえた上で、面接を受ける側の人に伝えたいのは

  • 「コンサルタントに必要な資質」と採用面接の際の視点は幾分か異なる
  • フェルミ推定などのお題については、回答よりもその後の対話を重視している

という2点。

特に後者については、コンサルという仕事そのものにも関わると思っている。

まず、以前に「コンサルタントに必要な資質」というものを書いたが、私が面接する際に基準となるのは、実はこれらの点とは場合によっては矛盾する。

それは何故かと言えば、私が言っている「コンサルタント」は基本的にパートナー、早くてもマネジャー後半からの役割。このブログ内でも幾度か触れているが、それまではコンサルタントになるための準備段階だし、プロジェクト内での役割も「作業者」。

そして、パートナーになる資格を得るのは採用した中でも本当にごく一部。自身の能力が足りずに辞める人も居るし、能力は有っても自身が望まないので辞める人も居る。
これ自体は健全なことだと思うので、採用時にもこれは前提としている。つまり、殆どの人は「作業者」で終わるのであり、面接する際にも「作業者として通用するのか」ということを軸に見ている。

言い換えると、昨日書いた「非連続的な成長ポイント」の一つ目のポイントの手前まで行けるかどうか。ここまで行けば、取り敢えずマネジャーとして作業を束ねることはできるようになる。

「パートナーでやっていけるか」ではなく「マネジャーまで辿り着けるか」が基本視点。

この軸に照らして、面接の際の評価の視点は下記のようなこと。

  • 明るさ
  • 素直さ
  • 頭の回転の速さ
  • 数字の強さ
  • 好奇心の強さ
  • 対話の中で考えを深められるか
  • 成長余地が有るか
  • 自分に自信が有るか
  • 泥臭い努力を積み重ねられるか

前5つは基本的な資質の部分だが、「コンサルタントに必要な資質」と決定的に違うのは、採用面接の際には「素直さ」を重視している。

「コンサルタントに必要な資質」の中では「ひねくれた性格」ということを挙げた。

実際問題としては単にひねくれているだけだとダメなのだが、何か言われても鵜呑みにせず、疑ってかかるような性格が必要。

しかし、これは「作業者」としては実はそれほど重要ではないと思っている。それよりも、人からアドバイスなどを受けた際、それを素直に受け止め行動に移せるのか。この方が「作業者」としては使い易い。(これがコンサルタントとしてどうかは別として、「使い易いから選ぶ」ということ)

なお、「素直さ」と「ひねくれた性格」は両立する。一度自分の中で疑ってかかるが、それが正しいと判断した後に素直に行動すれば良い。「コンサルタント」として成長するためにはこのようなことが必要。しかし、「作業者」であれば「素直さ」だけで良い。

基本的な資質の他4つは、その字面通りだが、これらの基本的な資質については、マネジャーの評価と私の評価がずれることは殆ど無い。

違いが出るのは、ここからだが、特に「対話の中で考えを深められるか」が特に重要な点だと感じている。

面接で多い「お題」は

  • 「日本国内の〇〇は幾つ有りますか」というフェルミ推定問題
  • 「〇〇社の社長に対してどういう提言をしますか」というケース問題

になるが、いずれにしても、その問いに対する回答そのもの以上に、その後の対話を重視している。

勿論、どの程度の回答を出せるのかは論理性等の判断材料になるのだが、特にケース問題については、その内容はさほど重視していない。
仮にこれを重視すると、経営系の専攻者/経験者の方が有利になる。しかし現実には、コンサルの採用の中で経営系の専攻/経験者の比率は高くない。

面接を受けていると、答えたものに対して意地悪いと感じるような全く違う視点での意見を出されることも出て来ると思う。これは別に意地悪をしてやろうと思っているのではなく、それに対してどのような反応をするのか、を見ている。

  • 出された意見を冷静に捉えることができるのか
  • 自分の考えに固執せず、必要に応じて出された意見を自分の考えに上手く組み込めるのか

出される意見は、一瞬「えっ?」と思うかも知れないが、しっかりと考えれば一理有るもののはず。これはコンサルの仕事の中でも良く有ること。

この時に、自分の意見に固執してもダメだが、相手の意見をただ受け入れるのもダメ。自分が出した意見と相手から出された意見を融合させ、一つ昇華させる。これができるかどうかを見ている。
しかも、自分に理が有るのであれば、融合しつつも自分の意見を軸に、相手に理が有るのであれば相手の意見を軸に、新しい考えを組み立てるようなことができるか。

面接に臨む際、「正しい答えを出せるか」に意識が傾斜し過ぎて失敗する人が多いように感じる。そのような意識が有るので、無理にでも自分の意見を正当化したりする。

これはコンサルタントの仕事についても同様で、必ずしも一発で「正しい答え」を提示する必要性は無い。相手の反応を受け、場合によっては「私達の考えが間違ってましたので、次回までに修正します」でも良い。

しかし実際には、相手を「論破する」という姿勢で臨む人も多い。この姿勢で臨んで提言が受け入れられることは、まず無い。

議論は勝敗ではなく、一つの共通見解に辿り着くために行うもの。
相手の良い意見を有難く頂き、自分の意見の至らなかった部分を直す。こういったことができるのかを見ている。

もう一つ、「成長余地が有るか」という点について。

最近(とは言っても10年とかになるが)、対策をかなりしっかりと練った上で選考に臨んで来る人が増えている。情報も増えているので、「コンサルの選考ではこういうことが聞かれる。それに対してこう考える」という方法論をしっかりと学び、それに則って面接を受ける人達。

この対策は全くやらないのはさすがにまずいと思う。「お作法」は知っておくべき。
とは言え、あまり対策をガチガチに立てても、とは思う。

面接時には、現在の能力レベルも当然見ているが、それ以上に「成長余地」をかなり重視している。どのみち、新卒にせよ中途にせよ、入社時点の能力などたかが知れている。必要なのはそこから能力を伸ばすこと。

受験も同様だと思うが、最近、あまりにも「余裕」が無い人が多い。「入社すること」が目的になり、そこに向けて途轍もない努力をする。

これが入社すれば一生安泰というような(幻想が有る)会社であればそれでも良いが、戦略系ファームはそういう場ではない。

フェルミ推定なども少しテクニカルなコツは有るけれど、別にその技術の高低を見ているわけではない。
また、対策をどの程度しているかどうかは分かるので、その分を考慮して評価をしている。あまり対策を意識し過ぎると、逆に自分の良さを消しかねないと感じる。

とは言え、パートナーでも「対策をどの程度しているか」を見抜けない人も少なからず居るので、入社することだけを目的とするのであれば、ガチガチに対策しても良いが、コンサルファームの場合、それは不幸の始まりだと思う・・・。

ちなみに余談として、これまで面接をして記憶に残る2人の方。

一人は「あなたが〇〇県知事だったとして・・・」というケースのお題を出したら「そんなこと私に聞かれてもねぇ」と腕を組んで失笑されて終わった、という人。

もう一人は「国内の〇〇の数は幾つ」というフェルミ推定のお題を出したら、「今の時代は情報社会であり、そのような調べれば分かる知識の詰め込みは意味が無い」という良く分からない演説を始めた人。

対策は必要無いが、「お作法」は知っておきましょう。

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