キャリアステージに応じたファームの選び方

コンサルタントのキャリアを歩む上で重要なのは、自身のキャリアの各ステージにおいて、どのファームを選択するのかだと感じる。

どのファームが良いのか/A社とB社どちらが良いのかといった相談を受けることも少なくない。
これらについて、普段接していて、どのような志向を持ち、どのような能力・経験水準にあるのかを理解しているマネジャー/スタッフ相手であれば回答できるが、あまり面識が無い人から相談をされても答えに困ることが多い。

どのような志向を持っているのか、そして、自身がどのようなステージに有るのかによって、選ぶべきファームは変わると思う。

志向については、「コンサルタントとしての能力を高めたい」のか「ビジネスパーソンとしての能力を高めたい」のか。まずこれが大きいと思う。これによって選ぶべきファームは変わると思う。
また、求める成長スピードや最終的に目指す水準。これによっても変わって来る。

以前に下記のようなブログを書いた。

プロフェッショナルたるコンサルタントとしての道を進むことを前提にするのであれば、戦略系ファームを選択肢として優先すべきだと思うが、そうでないとすれば変わる。
また、パッケージ化して事業をスケールさせる術を学ぶのであれば、業界内では恐らくアクセンチュアが最も長けている。

ファームを選ぶ上で、自身の志向がどこにあるのかは踏まえる必要が有ると思う。

その上で、「コンサルタントとしての能力を高めたい」という志向を前提とした場合、自身のキャリアステージがどの辺りにあるのかが重要だと思う。

キャリアステージは大きく

  1. 基礎スキルの習得をするステージ(アナリスト~アソシエイト前期)
  2. 経験値を積み上げるステージ(アソシエイト後期~マネジャー前期)
  3. 価値の付け方を学ぶステージ(マネジャー後期~準パートナー)
  4. セールス能力を高めるステージ(準パートナー~パートナー前期)

といったように分かれると感じている。
(カッコ内は職位の目安:勿論、ファームによって名称は異なる)

ステージが変わると、ファームに求めるべきものが変わる。
言い換えれば、ステージが変わった時には、今居るファームがそのステージに適しているのかを考え、適していないのであれば場を変えることも必要だと思う。

今居るファームが前のステージの場として適していたからと言って、それが次のステージに変わっても適しているとは限らない。

1. 基礎スキルの習得をするステージ

(以降、「新卒でMcKに入社して、スムーズにプロモーションできる」などという人は想定していないです:トップティアの戦略系ファームで一定評価が得られる人のことは、私は語れません)

コンサルタントになってすぐは、基礎スキル(「型」)を徹底して体に叩き込む時期になる。
この時期に如何に基礎を固められるのかにより、その後のコンサルタントとしての能力向上の限界が定まると感じている。

この時期は、ファーム/その中でのチームがどこなのかよりも、誰の下で仕事をするのかの方が大きい。
前提として、しっかりとしたアナリスト教育を受けた人でないと、アナリストに対する教育を施すことは難しい。
30歳近くになって事業会社からコンサルに転職した人などだと、アソシエイトで入って数年でマネジャーに上がるといったことも少なくない。そのような人の下について、このステージで必要なスキルを身に付けるのは結構難しい。

採用面接の場で「研修はどれだけ充実しているか」といった質問を受けることは多いのだが、正直、そのような質問をしてくる人は厳しい。一方で、スタッフ自身が高い意識を持ち、能力向上に励むだけでも成長には限界が有る。

例えば調査の進め方であったり、Excelのシートの組み方、構造化された文章の書き方などについては、特有の「コツ」のようなものが必要になる。
これらは、上位者とコミュニケーションを取りながら感覚的に身に付けて行くことが必要。これが出来る「兄弟子」のような人と巡り合うことが必要。

とは言え、入社前に「この人の下で」と特定できることは稀だと思う。

組織として最もシステマティックに出来ていると感じるのはアクセンチュアの戦略部門。ここは(プロパー組については)卒業生のスキルが極端に低いということが少ない。
加えてNRIのような、新卒採用の歴史が長く、基本的にプロパー中心で一定規模に達しているファームだろうか。パートナーの経歴を見て、新卒入社組が多いファームはしっかりとしていると思う。
(逆に、戦略系ファームでも規模の追求に走っているファームは最近、やや首を傾げることが多い)

一方で、他の総合系はかなり運に左右され、外れが多いという気がする(ACについても、たまたま私が接したことの有る人がサンプルとして偏りがあるだけの可能性も有る)。
他の総合系に行くのであれば、戦略系ファームでそれなりの実績を積んだ人が居るブティック系の方が良いと感じる。

なお、最もこのステージに適さないのは、新卒採用の歴史が浅い一方で、急激に人員を拡大しているファームだと思う。

2. 経験値を積み上げるステージ

「経営/戦略コンサルタント」としてのキャリアを志向するのであれば、このステージは規模の小さいファームの方が良いと思う(小さ過ぎるのも問題が有るが)。

まず、大手総合系ファーム(アクセンチュアを含めて)でキャリアを進める先に「経営/戦略コンサルタント」は無いと考えた方が良い。「経営/戦略コンサルタント」を志向する上で、この時期は最も総合系に居ることが適さないと感じている。

基本的に一定規模以上のファームでのアサインは「受注した案件に絡む経験の有るスタッフが居れば、その人をアサインする」という考えに則る場合が殆ど。同じ領域での経験が積み上がり易い。
その上、総合系ファームは「売れるテーマをパッケージ化して売る」という性質が強いので、特定テーマの案件の受注が繋がる傾向が強い。

そのため、経験の幅は広がり辛く、早い段階から「この領域の専門家(っぽい人)」という色が付き易い。
これが「人事コンサルタントとして歩む」といったものであれば良いのだが、「経営/戦略コンサルタント」の道を追求することを考えると、この段階で経験の幅が広がらないことはデメリットでしかないと思う。

戦略系でも、規模の大きいファームは経験の幅が広がり辛い。
規模の小さめの戦略系ファームが最も良いと思う。

規模の小さいファームは、営業力が弱くて「そもそも案件が無い」という状況が起こったり、在籍する人材(上位者)の質が低い、といったことも起こり易く、見極めは難しい。
このステージに居るということは、コンサル業界に移り一定経験は積んだという前提。であれば、多方面からの情報を踏まえ、しっかりと見極めた上で、規模の小さいファームに行くことが良いと思う。

3. 価値の付け方を学ぶステージ

マネジャーになると、「プロジェクトを回す」ということと同時に「示唆や洞察により価値を高める」ということが必要になる。後者が無いといつまで経っても薄っぺらいままで、結果として「高級文房具」と揶揄される存在になる。

「経営/戦略コンサルタント」になるか、別の海に流れ着くのか。その分水嶺と言えるのがこのステージ。

この時期に最も重要なのは「良質な過去の成果物」と、それをリードした人の講釈。

一つ手前の経験値を積み上げるステージまでも確かに良質な過去の成果物は重要なのだが、あくまでも「表面的に良質」であれば良い。
しかし、このステージでは、「如何に深く切り込んでいるのか」、「それはどういった思考を経て辿り着いたのか」といったことへの理解が必要になる。

言ってみれば、一つ手前のステージまでは「多読」で、このステージは「精読」。

このステージのファームの探し方が最も難しいと思う。
ファームの旬のようなものもある。

このステージに来る頃には、様々なファームの内部事情も見えて来ると思う。
それらから「このパートナーに師事したい」という人を特定し、直談判する位が良いと感じる。

この時期は、ファームのブランドはあまり関係ない。

4. セールス能力を高めるステージ

この時期に身に付けるべき能力は

  • 提案機会獲得方法(案件を発掘し提案に繋げる)
  • 提案方法(刺さる提案書を作成して受注に繋げる)

に大別される。これらは全く異なるもの。

個人的には、先に後者で、後から前者だと思っている(し、ジュニアなパートナーとシニアなパートナーの役割分担もそのようなイメージのファームが多いと思う)。

このステージでは、ブランド力/顧客基盤の有るファームに属することが必要。

セールスはデリバリ以上に個性の影響を受け易い。つまり、他のパートナーの真似をしているだけでは能力が高まらない。
自分なりのセールスの方法を自分自身で見出すことが必要になる。

そうすると、まず必要になるのが「提案機会」。つまり場数。
上述の通り、提案機会獲得方法を身に付ける以前に、自分なりの提案~受注までの「型」を見付けることが必要。そのためには結構な場数を踏む必要になる。
ブランド力による提案機会の差は極めて大きいので、このステージはブランド力が強いファームに属することは大きなメリットとなる。

更に、提案機会獲得方法についてはノウハウのようなものが有り、これもブランド力の高いファーム、特に総合系が長けている。
(戦略系の場合、ブランド力が過去の質的蓄積によって確立されている場合も多く、マーケティング力などは決して強くない)

これらの点を踏まえると、このステージについては圧倒的に大手総合系が適していると思う。

但し、パートナーの職位で総合系に入社すると、いきなり結構な数字責任を負う羽目になるので、一つ手前で入社した方が良い。

あくまでも完全なる私見として。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です