「怖い」という気持ち

昼間に書いた「コンサルタントはかなり失礼なことをやっている」に絡んで、以前に考えて記していたことを改めて。

前職時代、自分自身がマネジャー卒業時期に差し掛かっていた頃の話。

アソシエイトのスタッフが新しい案件を受注したということでお祝いのメールを送ったら、
「しっかりとした成果を出せるのかということに対して怖さを感じている」
という内容の返信が有った。

この気持ちを持てるかどうかが、コンサルの(コンサルに限らず、恐らく他の仕事でも)キャリアの中で一つの分水嶺になると感じている。
戦略系と呼ばれるファームに新卒で入って来るような人は、ほぼ例外無く頭が良い。また、その中でアソシエイト数年経過まで生き残っていれば、仕事を「こなす」能力については疑いが無いと判断しても間違い無いと思う。

しかし、そこからマネジャーとして(取り敢えずの)独り立ちが出来るかどうかは意識面が大きく関わって来る。

その中で大きな要素が、必要な品質水準を自分で規定するための意識だと思う。

スタッフとして働いているうちは、マネジャーが規定する品質水準に達するまで作業を続ければ取り敢えず何とかなる。品質が低ければ「やり直し」と言われ、場合によっては怒鳴られ、とは言え、いざとなったらマネジャーが巻き取る。
言い換えると、マネジャーを見て仕事をしていれば良い。

しかし、マネジャー以上になると、見るべき相手が顧客に明確に代わる。
(本来はスタッフの段階から顧客を見るべきなのだが、日々の作業での追われ方を考えると、新人のうちからそのようなことを求めても、実際には難しい場合も多い)

相手が顧客とマネジャーで違うのは、品質が低かった場合の反応。

マネジャー相手にスタッフが行う作業に関しては、マネジャーが求める(=顧客が期待しているだろうとマネジャーが考える)品質水準になるまで「やり直し」が命じられ、必要が有ればマネジャー自身が手を加える(更に、しっかりとしたパートナーであれば必ず、パートナー自身がその後ろで構えている)。

しかし、マネジャーの出した品質が低かった場合、その顧客に「やり直し」と言ってくれる場合はかなり幸せな例で、多くは無言で切られる。

顧客が期待する水準の品質を自分自身で規定し、自分自身で追い込んで行かなければならない。

そうすると、そこには「怖い」という気持ちが出て来る。

どれだけ品質を高めて行っても、まだ顧客の期待を満たしていないのではないかという不安などがよぎる。
システム開発のように明確な仕様に従って動けば良いというものではなく、顧客の主観によって判断されるものなのが、コンサルの場合は更に厳しさを上乗せする。

スタッフがマネジャーに上がれるかどうかを判断するためには、この水準を甘めに持つか厳しく持つかを見ると良いと思っている。このメールを送って来たスタッフはマネジャーのすぐ手前まで来ているとその時に感じた(そして実際、翌年だかにはマネジャーに昇進し、その後更に昇進して残っている)。

自分自身も常に「『怖さ』が有るか」という点は意識している。

しかし、意識しているつもりであっても、期待水準を気付かぬうちに下がって考えてしまう危険性が有る。また、「何とかできる」という驕りが生じる。

「怖い」と感じなくなった時は非常に危険。

改めて肝に銘じたい。

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