マネジャーになるまでにすべきこと

コンサルタントのキャリアの中で、一つの大きな転換点がマネジャー昇進だと思う。

ファームに属していていれば「コンサルタントをやっています」と言えるわけだが、本当の意味でのコンサルタントとしての勝負はマネジャー昇進によって始まると考えている。

しかし、マネジャー昇進後の勝負では、マネジャー昇進までにどのような質・量の経験を積んだのかが大きく影響する。

新卒もしくはそれに準ずる立場でファームに入った場合、マネジャー昇進までは5年間位が一つの目安になる。この5年間をどのように過ごすのかは、かなり意識した方が良い。

一度マネジャーになってしまうと、それまでに身に付けるべきことが不十分だとしても、改めて身に付けるということが(不可能ではないが)難しいものも多い。

特に必要なものは

  • 強靭な足腰
  • 幅広い種類の案件の経験

という2つだと思う。

「強靭な足腰」というのは、調査・分析といったコンサルタントの基本所作について、特にスピード。(正確性とかは大前提として)

マネジャーになると調査・分析能力についてスタッフに委ねると考える人も居るようだが、特にスピードについてスタッフよりも圧倒的に速い必要が有る。それは「巻き取り」のため。いざと言う時に最前線に立って高い戦闘力を発揮することもマネジャーの重要な役割。

Excel操作等を含めて、とにかくスピードを追求することが必要。

「幅広い種類の案件の経験」については、思っているよりも「幅広い」と思う。

マネジャーになると、ある程度、得意な領域とかテーマが見えて来る。そのため、マネジャー昇進後に経験できる案件はかなり偏って来るはず。

アサインする側としても、マネジャーは特に「経験が有る人」が優先される。そのため、マネジャーになってから領域を大きく広げるということは難しい。

そして、マネジャーで居る間は経験範囲が狭くてもあまり問題と感じない(むしろ経験範囲が狭い方が時として楽に感じる)と思う。

しかし問題になるのはパートナー昇進後。

マネジャーまでは言い方は悪いが「部品」なので、必要な所に適当な形のものをはめる。そのため「形がはっきりしている」方が、そして、なるべく「汎用性が高い」方が使い易い。

しかし、パートナーになると「設計」が仕事となる。顧客とのやり取りを通じて「どのような商品を求められているのか」をイメージ・デザインし、設計図に落とす。

「設計」の上で必要なのは、なるべく多くの種類の「部品」に関する知識と、設計の「アプローチ方法」に関する知識。

コンサルにおける「部品」というのは、例えば人事制度やシステム導入、原価管理やガバナンスといった個別テーマ。「アプローチ方法」というのは、例えば「カリスマ創業者が健在のオーナー企業における対処の考え方」とか「成熟市場で悩む企業における対処の考え方」といったようなもの。

顧客の真のニーズに合致した設計図を描くためにも、より多くの「部品」の種類、「アプローチ方法」を知ることが必要だが、後者は恐らく、マネジャーになって以降で良い。それまでは前者。

全てにおいて必ずしも詳しく知っている必要は無い。しかし、全く知らないというのでは話にならない。なるべく多くのテーマについて一度は経験しておいた方が良いと思う。

アソシエイトまでは経験の有無に依らずアサイン機会を手に入れ易い。しかし、マネジャーになると「未経験」の領域でのアサイン経験は得辛く、領域が固まり易い=アソシエイト時代までの経験で領域が規定される。

しかし、パートナーになると幅広い領域が必要となる。

これが、なるべく幅広い種類の案件をスタッフ時代に経験すべきと考える理由。

加えてもう一つの要素を加えるなら、「高いレベル(『本物』)を知る」ということか。

特に甘いファームで育つと、真に求められるレベルを理解できないままでマネジャーになる。そして、何となくその低い状態を「適正な状態」と感じてしまう。(私自身もそうだった)

マネジャー前半位までにコンサルタントから離れて行く人の中で「コンサルタントは大したことない」と感じている人は少なくないと思う。それは「本物」を知らないからだと思う。そして、自分自身が「大したことない」コンサルタントだったということ。

「『本物』を知る」ということは早い段階で経験しないと、ある程度の年齢/立場になると軌道修正が難しくなる。

その点からもアソシエイトの内に「本物」と接することが必要なのだが、まずファーム内で「本物」を探し、その人の下で仕事をする機会を得る努力をすること。

加えて、(トップティアのファームに属している人以外は)上位5%位の評価を受けていたら高いレベルのファームに移った方が良いと思う。総合系の人は戦略系へ、戦略系の中でもティアが低いファームの人は高いファームへ。

私が考えるベストな形は、元のファームでマネジャーに昇進し、1年経過時点を目途に高いティアのファームに転職する。その際には一度アソシエイトに職位を落として。

(注意点は、一般的に「トップティア」と言われている所でも、質が落ちているファームが有ることだが)

このような点に意識を払ってアソシエイトまでの時間を過ごすことが必要だと思う。

自分のキャリアについては常に意識を払わないと、マネジャー以上に都合良く使われて終わる。色々と上手いことを言う(コンサルタントは基本的に口が上手い)が、本気でスタッフのキャリアを考えている上位者などごく僅か。

コンサルタントは「ポータブルなスキルが身に付く」といったことが言われるが、実際には、かなり意識しないと「取り敢えず器用に作業できるが、特に何もできない人」に陥り易い。

自分のキャリアは自己責任だし、「若手」の期間は短く非常に貴重なので、自分のキャリアについて常に考えながら過ごした方が良いと思う。

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