コンサルファームにおける「優秀」という評価の理由

Twitter上で質問を受け、以前から書こうと思っていたことでもあったので、ここでまとめてみたいと思う。

「コンサルファームにおいて『優秀』の定義とは何なのか」

なお、前提として、「コンサルタントとして」ではなく「コンサルファームにおいて」という話をする。これらは特にスタッフの話だと異なって来ると考えている。

コンサルファームにおけるスタッフの役割は、「コンサルタント」が行うことの一部を機能特化させたようなものだと思う。そのため、「コンサルファームにおいて」優秀と評価される人が、必ずしも「コンサルタントとして」優秀とは限らないと思う。

加えて、取り敢えずスタッフに限る。

理由の一つとしては、マネジャーになるとファームや部門によって求められる役割がかなり違うため。

もう一つの理由は、マネジャーの中でパートナーに近い立場とスタッフに近い立場(要するにシニアなマネジャーかジュニアなマネジャーか)によっても全く求められるものが変わって来るため。

いずれにせよ、話が個別具体的になるため。(考えをまとめようと思ったが、分類が多くなり過ぎるので止めた)

また、「かなり優秀」と評価される人について、評価者が変わっても評価が変わることは殆どない。しかし、「まあまあ優秀」程度だと、一部で評価が分かれる場合が有る。

これは、能力・スキルの問題ではなく、意識の部分で意見が分かれることが多いと感じている。

では、どのようなスタッフが「優秀」と評されるのか。

頭の回転やコミュニケーションといった要素は前提とする。敢えて書くまでもない。
これらはコンサルタントとして生きて行く上で「必要条件」のようなもの。これらを備えていなければ優秀でないのは当然。

その上で必要なことは

  • 安定感
  • 持続力
  • 好奇心
  • 主体性

という4つではないかと思う。

安定感

これは「案件によってぶれないこと」と「日々の作業でぶれないこと」の2つが有ると思う。

前者は、テーマに対する関心やマネジャーとの相性によるパフォーマンス差が大きく出ないということ。
スタッフについては、「当たると大きい」というタイプは計算が出来ないので非常に使い辛い。自分が関心の無い案件にアサインされると途端に「やっつけ」的な仕事になる人が居るが、これだと高い評価は得辛いと思う。

後者も結局は同じことだが、気分のムラなどでのパフォーマンス差が大きいと厳しい。
例えば、集中力が欠ける日には作業スピードが落ちたりミスが多く生じたりするタイプ。このような人の場合、上位者は仕事を割り振る/確認する際に、「パフォーマンスが下がっている状態」を前提とすることが必要になる。

ある人のパフォーマンスが高い時には100、低い時には30、平均で80であり、他のスタッフの平均が50だとした場合、平均で見ると相対的に優秀のはずなのだが、実際の評価は「30」で見られて烙印を押される、といったこと。

要するに、上位者から見て「計算できる」ことはかなり重要。

持続力

評価が大きく分かれるのは、プロジェクトの大詰めや難局などの「肉体的にも精神的にも厳しい」状態に陥った時だと思う。平常時だと能力・スキル相応の差になるが、このような状態になると、必ずしも能力・スキル差=評価差にならない。

コンサルタントとして求められる一つの大きな要素が「極限まで考え続ける」と言うこと。

明確な答えが無い問いに向き合っているので、「ここまで考えれば終わり」というゴールは無い。特に若手スタッフの場合には、「考え抜いた」と自分で感じていてもかなり浅い状態にあることが多い。
そのため、締め切りギリギリまで、しかも常に考え続けること。これが必要になると思う。

優秀と感じるスタッフとそうでないスタッフの違いは、プロジェクトの報告会が終わった後の帰り道に結構色濃く出るように感じている。
優秀なスタッフは、帰り道にも案件に絡む議論をし続けている。要するに「締め切りギリギリ」どころか「締め切り後」にも考えている。しかも、別に「仕事」としてではなく、「個人的興味」として議論をしているように感じる。

やはり、仕事を「仕事という割り切り」の中でやっている限りは難しいと思う。

論語にある

知之者不如好之者

好之者不如楽之者

 (これを知る者はこれを好む者にしかず。これを好む者はこれを楽しむ者にしかず。)

ということかと思う。

好奇心

優秀なコンサルタントは例外無く、好奇心が極めて強い。

これが前述の持続性などにも繋がっているのだろうが、新しいことを学ぶこと/知ることを「楽しい」と感じられる性格が必要。

とは言え、単に好奇心が強いだけだと単に「物知り博士」で終わる。

コンサルタントとしては、好奇心によって得た知識を用いて、「気の利いたアナロジーを示す」ことが出来るかどうかで、評価が大きく分かれると思っている。

戦略コンサルの生命線は、洞察を基に概念化/抽象化することだと考えている。特に概念化/抽象化をするに際して、アナロジーが活きるケースが少なくない。
これは、意味の有るアナロジーとの共通点こそが「概念化/抽象化の鍵となる本質部分」になるから。

そのためにも、単に知識をストックするだけでなく、その過程でビジネスや人間行動などと照らし合わせることが必要なのかと感じる。

ちなみに、これは因果関係が有るのかどうかは分からないが、相関関係は有りそうなこと。

「優秀な(スタッフに限らず)コンサルタントは、かなりの量の漫画を読んでいる」

勿論、漫画以外の本もかなり読んでいるが。

主体性

優秀なスタッフが「作業のやり方(How)」を聞いてくることは皆無。

逆に「何をゴールとするのか(What)」と「何のためにやるのか(Why)」をかなりしつこく聞いてくる。これが明瞭になるまで作業に取り掛からない。

そして、全く見当が付かないような状態から「What」に向けて「How」を捻り出す。どれだけ難しい「What」に対しても「How」を創り出せるのが優秀なスタッフだと思う。

論外なのは「やったことないです」という発言。スタッフの「やったこと有るもの」など非常に限定的で、仕事の多くが「やったことない」こと。これに取り組むスタンスは決定的な差になる。

そもそも、「やり方を考えるのが仕事」であり、やり方が定まり、それに従って進めるのは単なる作業者。そのような人に高い報酬を払う必要は無い。

しかし、この点についての認識が決定的に欠けている人がかなり多い。

ざっとこのような所だろうか。

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