コンサルタントという職を選ぶ上で留意すべき点

先日、Twitterで触れた下記の点について。

コンサルタントという職を選ぶ際、取り扱っている対象(ビジネス、経営)についての興味だけで考えてしまうことで、入社後に「合わない」と感じる人が多いように感じる。
また、「合わない」ということが端から見ていて強く感じるのだが、本人はこの点についての認識が出来ていない、というケースも多いと思う。ミスマッチが生じていることに気付かずにモヤモヤと苦悩する状態。

ミスマッチはしっかりと認識し、本当に合わないなら早くに他の道を選んだ方が良い。

コンサルタントという職を選ぶ際、下記のような仕事上の特性は認識し、これらが自分にとって合っているのかを、かなりしっかりと考えた方が良いと思う。

  1. 解法も正解も無い問題を考え続ける
  2. 常に新しい知識・スキルを習得する
  3. 時として膨大な単純反復作業を延々と行う
  4. 非常に緻密に考えることと、ザックリと考えることの双方を高度にこなし、使い分ける
  5. 理が通じない人を相手に色々な手を駆使して動かす
  6. 最後まで携わることが出来ない

これらは勿論、私の主観なので、異論が有る人も居ると思う。しかし、今まで私が数多くの人を見て来て「合わない」と感じるポイントから考えたものなので、全く間違っているというものではないと思う。

以下で簡単に補足。

1. 解法も正解も無い問題を考え続ける

コンサルタントになる人で「自分がコンサルに向いている」と考える理由に「難しい問題を解くのが好きだし得意」ということを挙げる人は多い。
しかし、コンサルが向き合う「問題」の性質は理解しておいた方が良い。

「問題を解くのが好き」という人は、問題が解けた時のスッキリした感じが好きだという理由が多いと思う。また、問題の解き方もパズルのような形のもので「問題に合った解法を探し出す」ということを「問題を解く」と言っている場合が多いように感じる。

コンサルの仕事で取り扱う問題は、基本的に「解法」が無い。正確には、「解法を考える」ことがコンサルの仕事と言って良い。
また、「正解」も無い。自分の中で「何となくこれが答えらしい」という判断を付けることが必要になる。つまり、白黒がはっきりと付かない。

解法も正解も無い問題を、延々と考え続けるようなことは好きか?

2. 常に新しい知識・スキルを習得する

改めて言うことではないのだが、この点についての認識が足りないスタッフがかなり多い。

まず、習得スピードの要求水準が極めて高い。業界知識であれば、最大1週間で専門家相手に案件の論点についての意見交換が出来るレベルに達することが必要。

また、「自分は新しい知識を得ることが好き」という人について「自分が興味を持つことに限る」という前提が付く人が多い。仕事において、必ずしも自分が興味を持てることとは限らない。それでも、そのことに関する知識を上述のスピード感で得る。

自分が興味を持てない領域についても、猛烈なスピードで知識・スキル習得を求められることに耐えられるのか?

3. 時として膨大な単純反復作業を延々と行う

特に若手のうちは、単純反復作業が生じるケースは多い。しかも、想像を遥かに超えるレベルで単純な作業。

過去数年間分の伝票を全てチェックする、DBの入力データの「ゆらぎ」を取り除く、等々。

本当にその作業がメッセージの裏付けとして必要なのか、ということはシビアに見るが、結果として「必要」となった時には、徹底的にその作業を行うことが求められる。
時として数週間に亘るし、集中力もかなり求められる。

これらはかなり精神的にもきつい作業なのだが、このような作業を通じて得られる情報こそがプロジェクト内で最も大きな価値になることも多い。
コンサルタントの仕事はかなり地味だが、そこに一種の「楽しみ」を見出せないと厳しい。

退屈な作業でも何らかの楽しみを見出し、1日10時間以上、数週間に亘って続けられるのか?

4. 非常に緻密に考えることと、ザックリと考えることの双方を高度にこなし、使い分ける

これは、以前に「顕微と俯瞰」といったようなことを書いたような気がする。

「緻密に考えることが好き」、「大きくザックリと考えることが好き」という思考のタイプは人によって有るが、好き嫌いに限らず、両方共出来ることが最終的には必ず求められる。
基本的には、若手のうちは緻密に考えなければならない。あるタイミングからは俯瞰的に捉えつつ、緻密との間を行き来しなければならない。

訓練に依る部分も多いのだが、留意すべきなのは「自分はこういう思考のタイプ」といったような「取捨」は許されないということ。向き不向きに限らず、いずれも高度に出来るようにならなければならない。

上記の単純反復作業もそうだが、コンサルの仕事では「性格的に苦手」ということを強いられる場面が多い。「得意なことを伸ばす」以前にこれが必要。

自分の苦手な部分を徹底的に行い、鍛えることが出来るのか?

5. 理が通じない人を相手に色々な手を駆使して動かす

コンサルタントはコミュニケーション力がかなり求められる。

コミュニケーションに関しては、相手の意向、特に顧客が心の裏側で思っている「ホンネ」を捉えることが一つ(受信側)。もう一つは自分の考えを伝え、顧客を動かすということ(発信側)。実際には顧客とのコミュニケーションだけではないが、この点が重要になる。

コミュニケーションについて留意すべきは、相手が「理が通じる」とは限らないということ。むしろ、「理が通じない」人を相手とするケースが非常に多い。

要するに「わからんちん」を相手にコミュニケーションを取らなければならない。

そしてこれがコンサルタントとしての価値の源泉になり易い。
そうすると、このような場面で「どのように相手を動かすか」という問題への答えを見出すことに楽しみを見出す(燃える)タイプでないと難しいと思う。

コンサルタントのコミュニケーションは、頭の片側で「理」の回路を回しつつ、反対側で「情」の回路を回すといったことが必要になる。
「理に従って物事を進める」ことを好んでコンサルタントを選ぶ人が多いが、実態はかなり違う。「理不尽」なことを受け止める必要が有る場面も非常に多い。

理が通じない状況を楽しみ、そのような人を相手に丁寧にコミュニケーションを取れるのか?

6. 最後まで携わることが出来ない

コンサルタントは、顧客が必要とする局面に限定して支援をするアドバイザー。

それを踏まえ、いかんともしがたい特性は「主体者にはなれない」ということと「最後まで携わることが出来ない」ということ。

前者については、さすがに認識してコンサルタントという職を選ぶ人が多いと思う。それでもそのことについての葛藤を抱えるようになる人が多く、結果としてこれを理由として退職する人も多いと認識しているが。

一方で後者については見落とされがち。
例えば新規事業であれば「サービス立ち上げまで支援したい」という意向を持つ人が多いが、そこまでコンサルタント(に高い報酬を支払い続けること)が必要とは限らない。
「最後まで支援する」ということが良いことのように唱える人も居るが、そのような価値観はプロフェッショナルたるコンサルタントとしては間違っていると私は考えている。

特に若手の視点から見ると「中途半端」もしくは「消化不良」で終わるケースも多いと思う。

コンサルタントと言うのは結局、裏方作業を必要な局面だけ手伝う仕事人。求められたら現れ、自分の仕事が終わったらすぐに去る。
野球で言えば「中継ぎピッチャー」・・・と位は言いたいところだが、実際は「中継ぎピッチャーに対してアドバイスを送るブルペンに居るコーチ」といったところ。
しかも、自分の仕事がしっかりと果たしたら、満足感を持って試合中でもスタジアムを去る。結果はニュースで見る。勝利の喜びの輪に入れないことの方が多い。

「自分の仕事の範囲」に割り切りを持ち、そこの中で意義を見出せるのか?

こんな感じだろうか。

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