育成の観点から見た議事録を作成する意味

Twitterで議事録に関して書いたら反響が大きい。

これは、議事録の必要性を強く感じる人が多い一方で、ひょっとしたら議事録の作成の真の意味を理解していない(特に若手の)人も多いのかも、と思い、こちらで補足。

議事録を作成する主たる目的は当然だが「議事内容を記録する」ことにある。

この点も少し細分できる(かつ、それによって作成の仕方も変わる)のだが、今回の話の主眼ではないのでここは割愛。

ビジネスの場において議事録を作成するもう一つの大きな目的は「若手の育成」にあると思う。Twitterでの反応を見ていても、ここに同意頂ける人は多いようだ。

議事録を作成するステップを大きく分けると

  1. 会議の中で話している内容を正確に理解する
  2. 理解した内容を整理する
  3. 整理したものを、読み手が正確に理解できる文章に落とし込む

というようになる。そしてこれは、特に若手ビジネスパーソンの仕事の流れを凝縮したものだと感じる。

議事録を読むと、その作成者の能力をかなり明確に把握することが出来る。

これは前述のステップの通りで、「話の内容を理解できていない」、「話の内容には付いて来れているが、頭の中で整理出来ていない」、「言語化が出来ていない」といった形で、どこまで出来ているのかが手に取るように掴めるから。

しかも「整理出来ていない」という点も、構造化の問題、分類方法の問題等々、細分化して掴むことが出来る。

逆に、議事録を作成する際には、このステップを一つ一つ意識することが必要。

会議の中で話している内容を正確に理解する。

当たり前だと感じるだろうが、実はこの時点で不十分という人がかなり多い。理解できない理由は

  • 前提知識の不足(業界構造、顧客の事業構造、専門用語等)
  • 日本語の理解力の不足

のいずれかが多いと思う。(たまに集中力不足といったことも有るが)

コンサルの場合、顧客との会議での話やインタビューでの内容等を正確に理解するには、前提知識がかなり必要となる。顧客はその道のプロなわけで、顧客にとって「当たり前」ということは特に説明無く進むことが多い。これは他業界でも同様で、上位者が持っている知識と若手の知識レベルの差は大きい。

つまり、議事録を作成する立場の人にとって基本的に「前提知識の不足」は生じるもの。それを埋めることが必要。

勿論、それなりに勉強しても全く理解できないような内容の話が出て来ることも有る。その時には会議の場での確認が必要なのだが、仮に上位者がスルーしている(=上位者は分かっている)とすれば、それは勉強不足だと考えた方が良い。

日本語の理解力については、特に指示代名詞が何を受けているのかが正確に理解できていない場合が多いように感じる。

話す側の問題も有るのだが、推敲した文章でもこの点は難しい時も有るので、流れで話される内容だと時に滅茶苦茶になる。唐突に話の主題が変わっていたりもするので。

そのため、顧客との会議の内容は常に頭をフル回転させて聞く必要が有る。何について話しているのか、本人の意見なのか一般論なのか、賛成なのか反対なのか等々。常に意味合いを追い掛けることが必要。

とは言え、分からなかったものは分からないで仕方無い。その場合には、手元のノートなりには取り敢えず「聴いた通りの音」を書き取っておき、その意味を上位者に会議後すぐに確認することが必要。

その上で内容の整理。これは構造化と抽象化。

議事録は通常、話の流れ(時系列)で書くのではなく、整理し直して書く。(これに関しては例外も有る)

その際、まずはしっかりとした構造化。大きな流れ、その中での分類。徹底的に構造化することが必要。

また、細か過ぎる(単に発言内容の列挙)議事録は分かり辛い。そのため、抽象化して分類などをまとめることも大切。

そして重要なのが「読み手が正確に理解できる文章に落とし込む」ということ。

文章は、自分自身は当然「何が言いたいのか」が分かっているので、その文章を正確に理解することが出来る。しかし、それを相手に示した所で必ずしも正確に理解されるとは限らない。

これは作成者が日本語の文法や言葉の用法を間違っているというわけではなく(仮に間違っていたら論外だが・・・)、特に日本語というのはそのような性質を持っているから。

文法的に正しいだけでなく、例えば指示代名詞も「そのように考える」という場合の「その」が何を指すのか迷いそうだと感じたら「〇〇が問題だと考える」というように重複感が有っても下して書いた方が良かったりする。

これを徹底する。

これらは、少なくともコンサルタントに関しては仕事の根底。ここを鍛え上げることが成長の近道になる。

Twitterで書いたが、議事録はとにかく徹底的に赤入れ(レビュー)して貰った方が良い。何故なら、自分では何が悪いのかが分かり辛いから。

先述の3ステップの中で「内容を正確に理解する」という点は比較的自分でも(理解できていないということが)分かり易い。とは言え、正確に理解していると思っていることが実は誤った認識だったということは少なくない。

ましてや「内容を整理する」、「読み手が正確に理解できる文章に落とし込む」というものは自分では評価し辛い。特に後者はどこまで行っても第三者の目線は必要だと思っている。

この訓練を社会人の最初に受けているか否か。これはかなり大きな差に繋がる。

また、特にコンサルタントの場合には「常に新しい業界であること故の難しさ」、「求められる論理性の水準の高さ」、「言葉の重要差が極めて高い」といった性質を持つ。故に、それらを凝縮した議事録作成能力がかなり高くない限り通用しないと考えた方が良い。

何となく作成過程を「これらは当然のこと」位に書いたが、実際に書いてみると議事録作成はかなり難しい。非常に優秀な人でも最初は本当に「真っ赤」になるまで修正が入る。

(仮に社会人/コンサルタントになって最初から何も修正指示が無いということは、単に上位者が見ていないか、見ているけど面倒臭いから放ってあるだけだと思う)

しかし、これはみんなが通ったこと。

目安として、アナリスト卒業までに「多くても1回のレビューで完成させられる」レベルに達することが必要。そして、アソシエイトになったらレビュー無しは当然、むしろレビューする側に回ることが必要だと考える。

なお、日本語の作文については下記の記事内にお勧め本を記載したので、よろしければご参照を。

コンサルタント向け推奨書籍(1. 基本意識・スキル編)

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