コンサルタント向け推奨書籍(1. 基本意識・スキル編)

スタッフ向けに推奨図書をリスト化して渡したりしていたのだが、自分の頭の中の整理も兼ねてブラッシュアップ&絞り込みをした。
やはり、絞り込んで行くと定番本が多くなるが、良いものは良い。

まずはコンサルの基本的な意識やスキルの部分について。
追って、戦略や組織といった類についてのものは纏めたい。

1.1. 意識醸成

1.1.1. 企業参謀

さすがに業界関係者でこの本を読んだことが無い人は居ないだろう・・・という存在。

取り敢えず、戦略コンサルタントになる(なりたい)と決めた時点で読んでおくべき一冊。

戦略論の本に入れて良いのだが、それ以前に「戦略コンサルタントとはこう考えるべき」という意識を醸成するための一冊として、節目節目で読み返し、自身の仕事のやり方を振り返るべきだと感じる。(私も定期的に読み返している)

1.1.2. 選ばれるプロフェッショナル

プロフェッショナルとして追求すべき姿についての示唆が多い一冊。

恐らく、マネジャーとして案件を一通り回せるようになり、パートナー昇進を見据えた時期に読むのが一番刺さると思う。しかし、プロフェッショナルであることはアナリスト時代から同様であるため、まずは一度読み、その上で昇進の時ごとに読み返すのが良いのではないかと思う。

1.1.3. プロフェッショナル原論

一流のコンサルタントが書いた本なので、「コンサルタント」という仕事に即したプロフェッショナルというものを考えるのに適した一冊。

コンサルタントになるのであれば一度、この本は読んでおいた方が良い。

1.1.4. 益源

経営理論でも手法でもなく、企業経営における大原則のようなものがまとめられた一冊。薄いのでサクッと読めるが、じっくりと読むと味わい深い。

マネジャー以下を見ていると「複雑に考え過ぎる」と感じることが多いが、考えるべきことは実は非常にシンプルな場合が多い。この本を読んでも直接的に(特に若手の)コンサルタントとしての仕事の質が高まるとは到底思えないが、「シンプルに考える」ために必要な要素がまとめられていると思う。

但し、まず絶版本であり、かつ中古流通量も少ないので手に入り辛い。今、Amazonで見て8,000円近い値段(定価は1,905円+税)が付いていて驚いた。
(※2020/6/13時点で欠品)

また、やや「宗教的」な印象を受ける(ので、これまであまりスタッフにも勧めてこなかった)。好き嫌いは分かれるかも知れない。個人的には、やはりこの本は素晴らしいと思う。

1.2. 思考・分析方法

※ここでの分析は「着眼方法/切り口」といったニュアンスで捉えて下さい

1.2.1. 知的複眼思考法

別にコンサル向けとかコンサルが書いたという本ではないが、戦略コンサルタントの思考の基本がまとめられている一冊。

この本に関しては下記記事をご参照を。

(参考)「コンサルタントになる人が入社前に読んでおいた方が良い本」

1.2.2. 思考の整理学

コンサルの核である「思考」に向けて、その素材となる情報などをどのように蓄え、熟成されるか、といったことが主眼の本。

若手のうちは目先の案件に集中しがちだが、徐々に自分なりのアンテナが立ち、色々と情報を蓄えだすと思う。その際に、この本が役立つと思う。

1.2.3. イシューからはじめよ

この本も多く(殆ど)のファームでは既に必読書になっているはず。

改めて紹介するまでも無いが、コンサルタントの本分である「考える」ということに対してどのように臨むべきかが示されている良書。

1.2.4. 中高生からの論文入門

調査から始まり、考えの組み立て方・まとめ方といったことについての基本が学べる。

勿論、大学でしっかりとこのような教育を受けている人には全く不要な(今更感の有る)内容だろうが、もしも体系的に学んだことが無ければお勧め。

(中高生向けなので「ブラインドタッチを身に付けよう」的な記載も有るが、ご愛敬)

ちなみに、スタッフがある纏まったテーマについての調査を依頼された場合、報告の際の基本的な考え方は論文と同様。(見た目は別)

1.2.5. 問題解決プロフェッショナル 

これも定番本の2部作。(特に「思考と技術」は私が若手の頃には既に定番だった)

若手は特に「思考と技術」はしっかりと読み、考え方を身に付けるべき。そもそも、就職/転職活動時に読んでいる人が多いかも知れない。

逆に、この本に書かれた程度の内容は入社2年目には当たり前と感じなければ厳しいと思う。

一方で「構想力と分析力」は問いの立て方といったことが中心。

両方共読んで損は無い。

1.2.6. 意思決定のための「分析の技術」 

これもかなりの定番書。分析する際の着眼方法についてはベストと言える。

絶対に読んでおくべき一冊。

1.2.7. ザ・ゴール

定番本が続いて申し訳ないが、別に奇をてらう必要も無いので、良いと思うものは載せておく。

この本もコンサルタントであれば必読。

目的に対して、様々な制約条件が有る中でどのように最適化を図るのか、ということが小説仕立てで書かれている。非常に分厚いが読み易く、すらすらと読める。

1.2.8. 考具

これは博報堂の人が書いた、「積み上げ的に物事を考える」よりも「思い付く」ためのテクニックが書かれた本。 

戦略コンサルタントは「思い付く」ということが軽視されているように感じるが、実際にはかなり重要な要素。「積み上げ」だけだと、いつまで経っても「優秀な作業者」の範疇を抜け出せない。

ここに書かれているのは結構一般的なので、一度しっかりと読んでおき、アイディアに詰まった時に目次だけ読み返してみると良い。

1.2.9. プロフェッショナリズムと問題解決の実践(※2020.9.8追記)

Twitterでフォローさせて頂いているトーキョーハーバー氏が、コンサルタントとして求められている思考方法等について実践的な視点から書かれたKindle本。

私自身、上述の「イシューからはじめよ」を読んでいて、原理的には確かにそうなのだが、実践上は少し工夫が必要だな・・・と感じることが有った。また、若手が実際に、「『イシューからはじめよ』に愚直に従う」というスタンスで作業に取り組み、全く機能しなくなった・・・という経験も有る。

その「行間」を埋めるような意味で、非常に優れた本。謂わば「イシューからはじめよ」(および波頭亮氏「プロフェッショナル原論」など)の副読本といった位置付けとして良い。

1.3. アウトプット/コミュニケーション方法

1.3.1. スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

プレゼンテーションの技術も勿論そうだが、広く「相手に対する伝え方」について非常に示唆が多い一冊。出版直後に読んだ時に唸った。

また、個人的には、スタッフとして「しっかりと考える」ことから、マネジャーとして「シンプルに考える」ことへの転換を図る上でも有益だと考えている。

幾度も読み返すと良い。

1.3.2. 外資系コンサルのスライド作成術

タイトル通り、コンサルタントのスライド作成の基本が全てまとめられた定番書。

細かな点については各ファーム毎にそれぞれルールは有ると思うので、ファームに属する限りそれに従うことが先決だが、基本はここ。

1.3.3. 日本語作文術

文章作成に関する本。

戦略コンサルタントにとっては、「自分が言いたいことを、自分が意図した通りに的確に相手に理解させる」ことは絶対不可欠な要素。そのためにも日本語での文章作成のスキルを高めることが必要なのだが、この点で今まで私が読んだ中では(圧倒的に)最高の一冊。

特に第一章の「短文道場」はコンサルタントとして必読とも感じる。

1.3.4. 知的文章とプレゼンテーション 

日本語表現に関してはこの本も非常に良い。以前に書いた記事(「コンサルタントが早めに読んでおいた方が良い本」)で実は上の「日本語作文術」とどちらにするか悩んだ。(別に両方挙げても良いのだが、何となく絞りたかった)

2冊は少し主眼が違う。「日本語作文術」はまさに日本語での「文章作成」。この点では書いた通り圧倒的。この本はどちらかと言うと「表現」という方が近いように感じる。

こちらの方がひょっとしたら「コンサルタントの書く日本語」という点では適しているかも知れないと思ったのだが、上述した「短文道場」は必読だと思ったので上の本にした。

どちらも新書なので、両方読んでもそれほど時間は掛からないし、損は無い。

1.3.5. 「分かりやすい表現」の技術 

この本はビジュアルも含めた表現に関する本。資料作成全般に有益。

経験が浅くても、資料を見て、それが「分かり易い」のか「分かり辛い」のかは分かるはず。しかし、実際に分かり易い資料を作るためには、「なぜ分かり辛いのか」、「分かり易くするために何が必要なのか」を説明できるようになる必要が有る。

(言い換えると、資料のレビューで「見せ方」についてのレビューをする際には、ここの2点をしっかりと示すことが必要)

そのための勉強になる。

1.3.6. 日本語のレトリック

リベラルアーツの一要素である修辞学(レトリック)については色々な本が出されていて良い本も多い。別にこの本でなくても良いが、もしも今まで修辞学にあまり触れていなければ何かは読んだ方が良い。

その中でこの本は岩波ジュニア新書なので読み易く、分かり易いのでお勧め。

ちなみに、このシリーズは大人でも勉強になる本が非常に多い。書店に行った際、このシリーズとブルーバックス、講談社学術文庫という3つの文庫/新書コーナーを巡るのは私の楽しみ。

何か学び始める際、この岩波ジュニア新書かブルーバックスに入門書が有れば、ここから入るのが(勉強の苦手な私には)ベスト。

(誰かに貸したまま帰って来てないな・・・ま、再度購入するか)

1.3.7. 途上国の人々との話し方 

立場、価値観が大きく違うような人と一緒に対話しながらゴールを目指す、というような状況に対して示唆が大きいと感じる一冊。

私自身、この本はまだ読み込みが足りないと思っているし、実践にどう活かすのかはこれから模索する所だが、かなり考えさせられることが多い。

コンサルタントにとっては非常に学びが多いと思う。

今回紹介した中で、最も強く勧めたかった本。

1.4. その他基本スキル

1.4.1. ビジネス統計学(2020.3.16追記)

大学までで意外としっかりとした教育されておらず、一方でビジネスパーソンとして必要性が高いと感じるのが統計学。

コンサルタントとしては不可欠な知識なので、一度しっかり学んだ方が良いが、その点でお勧めなのがこの本。

恐らく、初学者でも分かり易いと思う。
(但し、この領域は私は専門教育をされていること、また、この本自体が結構なボリュームが有るので、他に良い本が有ればそれで良い)

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