「戦略コンサルタント」という人達が出す価値

「戦略コンサルタント」という仕事について。

この仕事は非常に漠としているし、そもそも「戦略コンサルタント」という呼び方自体が仕事の中身を的確に表現できていない。そのため、やっている当人達ですら、自分達がどのような価値を出しているのかということに迷うことが多いと感じる。

私自身も随分と悩んだ時期が有った。
ちなみに、私の中での自己定義は「戦略コンサルタント」ではなく「経営コンサルタント」。別に戦略を立てることを生業としているつもりはない。しかし、「戦略コンサルタント」という表現は(特に若手相手には)受けが良いので、便宜上この言葉を使っている。

「戦略コンサルタントがやっていることはコモディティ化していて、既に価値は無い」といったようなことが言われて久しい。戦略コンサル出身者が在籍する企業も増えて、そのような企業は戦略コンサルタントがやっている仕事を内製出来る、もしくはネットの普及で・・・といった論調。

この点については、一側面としては正しいと思う。要するに、その程度の価値しか出せていない人が多いということ。
しかし、仮に「戦略コンサルタント」を自称している人が本気で「自分のやっている仕事は顧客社内の人でも出来る」と考えているのであれば、それはかなりまずい状態だと思う。

外部の人間である「戦略コンサルタント」が故に出せる価値は残っているし、その価値は今後も残り続けると思う。

外部者たる「戦略コンサルタント」の価値の出し方は、大きくは2つなのかと感じている。

一つは、顧客企業内の「モヤモヤ」を整理するということ。もう一つは顧客企業の組織面の課題に手を入れるということ。

企業の中で「何かが上手く行っていない」という時は、非常に大きな課題がドンと有る、ということではなく、ちょっとした掛け違いが色々と派生して・・・という場合が多いように感じている。

丁寧に見て行くと凄いシンプルな課題に行き着く。誰もが何となく感じてはいる。しかし、脇役の一人位の認識でスポットライトは当たっていなかった。そこにスポットライトを当てることで、実は脇役だと思っていた人がストーリー上で凄い重要な役割だということに気付かせる。

課題を正しく認識し、その認識が社内で共通のものとなれば、後は組織の自浄作用が働く。そこから先はコンサルとしては、また道を逸れないようにすること、効率的にその道を歩めるような道先案内をすることが役割となるが、これ自体が非常に大きな価値が有るというわけではない。

ちなみに、経営層の中で意見が分かれて方向性が明確になっていない、ということが問題の会社というのも多く、その際にも「意見をまとめる」という役割を担うことも有るが、これも同じことだと思う。意見が分かれている場合には、その前提となる課題認識が共通のものとなっていないことが多い。もしくは「組織面の課題」に依拠するか。

しっかりとした分析と、俯瞰的な視点からの整理、そしてファシリテーション。
比較的若手のうちから出し易い価値だと思う。

ちなみに、ExcelやPowerPointの「操作」をもって「戦略コンサルタントの・・・」と語っている人が居るのだが、これは論外。確かに若手ビジネスパーソンの間で比較した時に「(鍛えられている&慣れているが故に)長けている」という評価は得られるかも知れないし、転職した際にその点が評価されることは有ると思うが、それはコンサルファームがビジネススキル専門学校という側面で価値(と言うのが正しいのか分からないが)を出したに過ぎない。

もう一つの「組織面の課題に手を入れる」ということについては、若手がいきなり出せる価値ではないと思う。

コンサルタントとして臨床経験を積み上げると、企業内で起こっている状況というのが手に取るように分かるようになる。
提案の前段階位で社長の悩みを伺っている際、10分程度話を伺うと「こういうことが起こっているんじゃないですか?」というようなことを伝えて驚かれることが多い。

このような状況に持ち込むと社長と組織に関する議論・提言が出来るようになり、一気に価値が出し易くなる。
戦略に関する相談は顧客との信頼関係が出来ないとしてもらえない。本気の戦略策定について支援してもらう相手をコンペで決めるということはしない。しかし。それ以上に組織の相談は信頼が必要。「この人は組織というものへの洞察が深い」ということを理解してもらえて初めて、組織に関しての案件の提案の場が持てる。

やはり、組織に関しては社内だけでは解決できない。議論する人自身が利害関係者になってしまうし、価値観の違いや感情的な要素等が正面からぶつかってしまう。

戦略の実行の際には、必ずと言って良いほどに組織の手直しが必要となる。ここは戦略コンサルタントが必ず必要とされる場所だと感じている。

この2つの価値は無くならない。

一方で、ビジネスとして「戦略コンサルタント」もしくは「コンサルファーム」を考えた時に、価値が残る=単体のビジネスとして残るということではない。
コンサルファームはかなり形が変わって行くし、「戦略コンサルタント」というものはもう残らないのかも知れないと思っている。
少なくとも、旧態依然とした時間フィー積み上げ式・アドバイザー型のビジネスモデルは、個で闘うプロフェッショナルは今後も生き残ると思うが、組織としては難しいと思う。

私自身も大きくキャリアの修正を掛けているのだが、自分自身の戦略コンサルタントとしての価値強化を図ると同時に、ビジネスとして「脱・戦略コンサルタント」に取り組み始めている。

「コンサルタント」に変わる、提供価値を表現する新しい言葉。これを探して行く。

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