コンサルタントが請求する高い報酬がなぜ正当化されるのかを意識することが必要

Twitterで書いた下記の件に関して。

コンサルタントは医師や弁護士、会計士のような資格による裏付けは無い。経験面においても、実際に企業経営をした経験が有るコンサルタントはファームにおいてはごく少数であり、経験を基に語ることもできない。

しかし、コンサルタントは非常に高い報酬を顧客に対して請求する。ファームに属するコンサルタントの報酬が極めて高いだけでなく、フリーランスで活動するコンサルタントについても、他の無形サービスを提供するフリーランスと比べて相対的に高い報酬になっている。

これがなぜ正当化されるのか。
正当化される理由に対して、自身が顧客に提供していることが則しているのか。

この点は常に意識する必要が有ると思う。

但し、やや捉え違いしている人も居ると思う。

まず、特にスタッフ(アソシエイト/アナリスト)クラスについては、自身の作業を単体で切り離して正当化することは不可能。自分のチャージレート(人月云百万円)と自分がやっている作業を見比べて「本当に見合っているのか?」と考えたところで、見合っているという結論にはならない。
スタッフはあくまでもマネジャー以上の作業の一部を担っているだけであり、その作業自体が数百万円のチャージレートと見合うということはあまりない。

スタッフは顧客に対して直接的に価値を提供しているのではなく、マネジャー以上を通じて間接的に価値提供していると考えた方が良い。

価値の出し方は大きく2つ。

  • マネジャー以上が出すアウトプット(洞察・示唆)の質を高めることに資する調査・分析等の結果を示す
  • マネジャー以上の相対的に価値の低い作業をより多く引き受けることで、マネジャー以上が価値の高い作業に時間を割けるようにする

これらによってチーム全体としての価値を正当化する。このような考え方が必要。

もう一つ。ファームに属する場合の「ブランド」の捉え方。この点が最近の私が色々考えていること。これについて。

一般的にフリーランスやブティックファームと呼ばれるようなファームに属するコンサルタントと比べ、知名度の高いファームのコンサルタントの顧客への請求額は高くなる。
これを「当然のこと」と捉える向きが有るが、必ずしも当然ではないし、実際に変化が見られると思っている。

ファームの「ブランド」によって報酬が高まる理由は、大きく3つの性質にあると思う。

  • 法人格の信用に対する信用保証料のような性質
  • 「〇〇社が言っている」という認証料のような性質
  • 一定の品質が担保されるという品質保証料のような性質

信用保証料的な部分については、例えば監査法人系とか金融機関系とかであれば変なことはやらないという信用ができる。知名度が高いファームも同様。
認証料については、要するに「マッキンゼーが言っています」と「コグレ&カンパニーが言っています」では説得力が全く異なる。
品質保証料が一般的な「ブランド」のイメージに近いと思う。有名なファームであればそれなりの品質が期待できるという「思い込み」が生じる。

フリーランスのコンサルタントなどと比べて、このような金額が乗っていることで、「ブランド」の有るファームの報酬は高くなる。

しかし、特に「品質保証料」の部分。ここについては変質している。そして、これは中期的に「認証料」に影響を来す可能性が高い。

「ブランド」は何らかの裏付けによって確立される。権力による裏付けなどの場合も有るが、「品質」による場合が多いと思う。
高品質の商品について、その品質を見極めることができるる人が評価をする。それによる評判が評判を呼ぶ形で積み重なることで「ブランド」となり、特に品質についての目利きをできない人にとって絶対的なものになる。

「ブランドが有るから高い」が正当化される。

しかし、提供する側にも関わらず、高い価格を「ブランドが有るから」と片付ける人は多いのだが、ブランド自体が品質などの裏付けの積み重ね。ブランドは簡単に毀損する。

ブランド確立後に品質が落ちても少しの間は高い価格を維持できるかも知れない。
しかし、「目利きができる人」から、品質と価格のバランスが合わなくなっていることに気付き、価格は崩れ始める。

コンサルファームにとって、顧客がかなりシビアに「目利き」ができるようになっているということは、もっと強く意識すべきだと思う。
「ブランドが有るから」と盲目的に受け入れる顧客が減りつつある。

最近、ブティックファームと呼ばれるファームやフリーランスのコンサルタントが、それなりのフィーで受注できるようになって来ていると思う。
「ブランド」があまり重視されない。

顧客側がコンサルの中身をかなり理解して来ている。
コンサルの提供サービスを分解し、必要な機能だけを発注するということは随分と前から生じて来ていた。
それに加えて、品質の目利きができるようになり、「ブランド」が無くても品質を目利きし、選定できるようになって来ている。

以前であれば、「有名ファーム」というだけで品質保証料のような上乗せができた。これが出来なくなって来ていると思う。シビアに目利きされている。
この状態が続けば、結構多くのファームが、今の価格を維持できなくなると思う。

全体的に、顧客を見下している/馬鹿にしている/なめているというような感じを受ける。

「自分の方が経営/ビジネスについて分かっている」というような驕り。
ファームに属するだけでコンサルタントが務まるようになるというような錯覚。

そんなような感じのもの。

顧客企業の経営者はコンサルタントよりも圧倒的に経験が豊富であり、その会社/事業/業界について、コンサルタントよりも圧倒的に考えている。

それでも、高い報酬を払ってコンサルタントに意見を求めるのはなぜなのか?
それに応えるために、コンサルタントは何をすべきなのか?

勘違いを取り除くことが、少なくともうちのファームでは必要だと、危機感を感じる最近。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です