戦略コンサルの将来

先日「戦略コンサルの変質」ということを書いたが、これは過去の変化。

それでは、将来どうなるかということ。

この点についての考えは自分自身でもまだ固まったものは無く、色々な人と議論している所なのだが、取り敢えず現時点での考えを整理する目的で書く。

 

このことを書く上で、仕事内容としての「戦略コンサルタント」についての議論と、組織としての「戦略系コンサルファーム」についての議論は全く異なるので、切り分けることが必要なのだが、まずは全体感について。

「『戦略コンサルタント』とは何か」の中で、

これから先の「戦略コンサルタント」はシンクタンク(McKinseyのMGI的なもの)か、組織変革系コンサルか、どちらかに寄って行くように考える

 というように書いた。これは価値の出し方について書いたもの。恐らく、価値の出し方としてはこのいずれかの方向に行くと思う。

言い換えれば、これまで「戦略コンサルタント」もしくは「戦略系コンサルファーム」としてやって来た仕事そのままを続けていては単体としての価値は無くなる(既に無くなりつつある)。

 

 

「戦略コンサルタント」の将来

では、仕事内容としての「戦略コンサルタント」を見た時、今後どうなって行くのか。

「戦略コンサルタント」を「戦略を立てるコンサルタント」として考えると、単体の産業/事業としては消滅する方向に行く(既に消滅しつつある)と思っている。

これは前述の通り、価値の出し方が変化し、「戦略を立てる」ことを訴求要素として報酬を頂くことが難しくなっているため。時にそういう案件も生じるとは思うが、数が限られるため、これだけで食べて行くのは難しくなる。

 

一方で、これまで「戦略コンサルタント」として行っていた仕事が無くなるか、というとそうではない。大きなビジネスモデルの中に組み込まれ、機能として今後も生き残って行くはず。

例えばプライベートエクイティファンドのような企業への投資においても、投資後の支援で戦略コンサルタントの機能が必要となるケースは多いと思う。しかしこの場合、「戦略コンサルタント」として報酬を受けるのではなく、投資事業というビジネス全体で利益を上げており、その一部に貢献している形になる。

IT系の場合も同様で、「戦略コンサルタント」的役割は言ってみれば営業活動の一部で、システム開発・運用で大きく回収する。その差別化の一手段になる。

 

「戦略を考える」ということが企業活動の中から失われることは有り得ないし、経営者がこの点について悩まなくなることも有り得ない(むしろ、今後更に悩みは深まる)。

幾ら企業内で戦略を立てられる人を揃えても、客観的・俯瞰的にその会社を捉えて物事を考えられるアドバイザーの価値が下がることは無い。

しかし、それ単体でお金を出すかと言うとそうでは無くなる。

「戦略コンサルタント」の機能は必要だけど、「戦略コンサルタント」自体を雇うことは少なくなる、ということだと思う。

(とは言え「無くなる」わけではないが、形が変わると思う:この点は改めて書きたい)

 

 

「戦略系コンサルファーム」の将来

次にファームとして見た時だが、所謂「戦略系ファーム」という言葉の意味は、随分と前に無くなっていると思う。

各ファームの英語サイトの方の自己定義を見比べても、基本的には「Management Consultant」という表現を使われているので、本来、「戦略系ファーム」などというものは幻想なのかも知れない、と思っている。

 

実態として、「戦略系」と「総合系」の垣根は、過去に比べて遥かに下がって来ている。やっている内容だけ見ると、「戦略系」が「総合系」に寄って行っているという印象が強い。

昔は「戦略系」と「総合系」の差は歴然としていたが、年寄りからすると隔世の感が有る。

 

しかし、これはあくまでも「やっている内容」の議論であって、少なくとも現時点では「戦略系コンサルファーム」は他のファーム/企業と比べて歴然とした違いが有ると思う。

それは

  • 思考能力が非常に高い
  • 自己成長に対して貪欲
  • 難しいテーマに対しても果敢に取り組む
  • ハードワークを厭わない

という非常にレアな人材を多く集め、それらの人材が切磋琢磨しているということ。

つまり、「仕事の内容」で見ると総合系などと大差無くなっているが、「場」で見ると未だに稀有な存在だと思っている。

 

戦略系ファームで働く価値はまさにここに有ると思っている。

「戦略系」と言っても戦略案件に携われるとは必ずしも限らず、そこに不満を持つ若手も多いことは認識している。しかし、特に若い時期にこのような「場」で働くことは、金銭で換算できない大きな価値を持っていると思う。

(「仕事内容」として選ぶなら戦略系を選ぶ意味はあまり無く、「場」として選ぶなら戦略系は非常におすすめ)

 

「戦略系コンサルファーム」の将来は、この「場」としての価値を維持できるかどうかにかかっていると思う。

この価値を維持できないファームは「戦略系」の中では淘汰され、徐々に「総合系」などとの競争に巻き込まれ、営業力など別の軸での競争に移る。

「淘汰され」という表現を使ったが、意図的に競争の軸を移しているファームも有るので、これは正しくないかも知れない。ファームの規模を拡大しようとすると「場」の維持をできないので、敢えて競争の軸を変えて規模の拡大を優先させるということも多い(ファームを運営する側から見ると、特に経済的にこの利点は大きい)。

 

戦略に限らず途轍も無い経営課題の解決を支援したり、企業が知見が無い新しいテーマ(最近だとデジタル領域等)に解を出して行くことを続ける。課題やテーマは多様だし常に変化する。逆に、解法が定まってしまったら出番は無くなる。

「誰も答えが分かっていないもの」に対する答えを出すことを生業とする。恐らく、「戦略系コンサルファーム」がこれまでやって来たことの本質はここで、今後もこれができることの価値は変わらないはず。

単にサービスメニューが変わるだけの話。

このような形で生き残るためには、「場」の価値を高め、絶えず優秀な人材を吸い寄せる。これしかない。

「戦略系コンサルファーム」という表現はもう適さなくなる(既に適していない)と思うが、このような希少な「場」を表現するものとして「戦略系コンサルファーム」という言葉が残るような気がする。

 

 

「戦略コンサル」を古い概念で捉えると将来は無い。既に終わっていると言って良いのかも知れない。

しかし、機能もしくはファームを「場」として捉えた時には、まだ価値が有る。

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