経営者に向けた勉強としてコンサルタントという仕事は相応しいのか

採用面接を行っていると、志望動機として「将来経営者になりたいので、そのための勉強をしたい」ということを挙げる人が少なくない。

(そもそも、採用面接の際に志望動機として「ずっとこの会社に居るつもりなど無い」ということを明言して受け入れられる業界も珍しいと、これを書いていて思ったが)

 

将来経営者になるためのステップとして、コンサルタントという仕事は相応しいのか?

 

これはYESでもありNOでもあると考える。

正確に言えば、「コンサルティングファーム」は勉強の場として相応しいが、「コンサルタント」は相応しくない。

 

この2つの言葉、同じことのようで全く別物。コンサルティングファームで働くプロフェッショナルスタッフは全て「コンサルタント」を名乗るが、真の意味でコンサルタント(経営者から見たConsultの相手)というのはごく一部。

基本的にはパートナーの、しかも一部だけだと考える。

 

経営者とコンサルタント

この2つは全く異なる性質を持っている。

 

まず、経営者は「自分が動く」、コンサルタントは「相手(経営者)を動かす」というように、目線が決定的に違う。

確かに、「何をすべきか」を考えるという点では両者に共通するが、コンサルタントで得られるものは「『すべきこと』に対して相手を動かす」ためのものの比重が圧倒的に大きいと思う。

これは、組織についてといった「考える内容」もそうだし、プレゼンテーション資料の作成およびプレゼンテーションそのもののスキルについても、あくまでも「動かす」ための手段/スキル。

分かり易い資料を作るとか、プレゼンが上手くなるとか、これらは特に起業した場合に間も無くはかなり役立つスキルだと思うが、経営者に求められる要素のごく一部だと思う。

 

また、それ以上の違いとして

  • 経営者はトライ&エラーによって進んで行く
  • コンサルタントはその時点で最適と考え得る解を追求する

ということがあると考える。

これにより、求められる資質、思考や行動の原理等々、全く異なって来る。そのため、コンサルタントとして一流になったとしても経営者になれば全く別の資質が求められるということが生じる。

むしろ、コンサルタントとしての成長を突き詰めれば突き詰めるほど、経営者としての適性は失われて行く、のではないかと。

もちろん、一流のコンサルタントが経営者に転じても一流という方も居るが、恐らく、思考・行動のアプローチを経営者仕様にかなり調整しているのではないかと思う。

 

では、なぜ「コンサルファーム」は経営者になるための勉強の場として適するのか。

簡単に言えば、コンサルファームの大多数を占めるマネジャー以下は真のコンサルタントではなく、コンサルタントが行う作業を粛々と遂行する「作業者」に過ぎないから。

 

経営者になるということに限らず、ビジネスパーソンとしての「汎用的な」能力を高めるために、戦略系のファームほど優れた場は無いと考えている。

仕事の進め方や作業スキル、ビジネスに関する知識等々、非常に汎用的かつ高度なものが身に付くため、しっかりとしたファームでマネジャーとしてプロジェクトを回せるようになれば、一生困らないものが得られる。

 

しかし、これは真の意味でのコンサルタントとは全く異なる。

あくまでも「汎用的な」能力が身に付くということ。

 

結局、戦略系のファームでの少なくともスタッフの期間は「準備期間」。マネジャーになって初めてコンサルタントに向けたスタート地点に立つ。

そして、この段階では経営者に向けたスタート地点に立っているとも言える。

 

特にスタッフ時代にしっかりと足腰を固めて初めて、それを踏まえて事業を推進する当事者になるのか、それを外部から支えるコンサルタントになるのか。その挑戦権を得るのだと思う。

 

仮に既にどのような道に進みたいのかがかなり明確になっているのであれば、それに適した場が他にあると思う。例えば自分で事業を立ち上げたいのであればベンチャー経営者を多く輩出している会社が幾つか有って、その方が適していると思うし、特定の業界での事業に携わるのであれば、やはりその業界で学ぶ方が良いのかと。

 

コンサルティングファームとは、まだ何をしたいのか見つけ出せていない人に対して猶予期間を与える場。

 

そんな風にも感じる。

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