古典名著を読む意味

このような状況の中でゴールデンウィークに突入すると、時間的に余裕が生まれる(と言うか持て余す)人も少なくないと思う。
このように、ある程度纏まった時間が有り、かつ、他に魅力的な選択肢を取れないような状況は、古典名著を読むのに最適な時だと思う。

文学に関する古典名著は脇に置くとして、ビジネス書の古典名著を読むことについて。

古典名著は、それを読んだから何か新しい知識が得られるようなものではないのは当然のこと。だから古典名著。
多少なりとも勉強をしていれば、当然、その古典名著に書かれている内容は前提となっている。例えばポーターを読んで戦略について「目から鱗」というような知識を得たという人が居たら、その人はそれまで全く勉強していなかった(か、相当に勉強の方向性を間違っていた)ということ。

古典名著を読む最大の意味は、自分の様々な体験を理論的かつ抽象的に整理できることにあると考えている。それにより、自分が漠然と感じていたことが言語化されたり、見ているようで見えていなかった部分に気付くことができる。

つまり、古典名著を読むことで得られるものというのは、自分自身の経験(正確に言えば、経験の中で吸収したこと)の総量に依ると考えている。

また、古典名著を読むということは「プロセス」であって「インプット」ではない。「考える」ということの触媒のようなものだと思う。
そのため、読むごとに得られるものが変わる。増える。

以前はつまらないと思っていたものが、時間を空けて読んだ時に非常に面白く感じる、ということが多い。しかも、幾度読んでも新しい何かを得られる。

何となくだが、古典名著を読んだ時の印象は「ふ~ん」→「良くまとまっているな」→「なるほど、こういうことだったのか!」→「深い・・・」→「!!!」というように変化すると感じている。

このような理由から、コンサルタントになってすぐに古典名著を読んでも、得られるものはかなり少ないと思っている。
しかし、これが「コンサルタントになってすぐに古典名著を読む意味が無い」ということには繋がらない。

前述のように、得られるものは自分自身の経験(の中で吸収したこと)の総量に依る。つまり、古典名著を読み返すことで、自分自身の成長を測ることができると考えている。
逆に、読んだ印象が「前に読んだ時と変わらない」と感じたとしたら、その間の成長が無かったということかも知れない。惰性に入っている状態。

コンサルタントの成長というのは、初めのうちは実感し易い。「できること」が日々増えるし、任されることも徐々に拡がる。
しかし、マネジャーに昇進したあたりから、そのような実感が減って行くと思う。むしろ、色々と見えない壁に当たることで「後退している」と感じるような局面が増えて来ると感じている。(優秀な人は違うのかも知れないが)

そのような時に、以前読んだ古典名著を読み返すと、その間に経験したものが投射されて新たな示唆を生み、少なからず何かが自分の中で積み上がっていることが感じられる。
この基準点を作るために、若手のうちに読んでおくのも良いと感じている。

自分自身はコンサルタントになって2年位が経過し、少し余裕が生まれた(かつ、少しつまらないという感じを持った)頃に、色々と古典名著を読むようになった。

その頃には多少なりとも経験をしたものが有ったので、「なるほど、こういうことね」といった感じで読んでいた覚えが有る。

その後、幾度かパラパラと読み返すことをたまに行っていたが、受ける印象が一番大きく変わったのは、マネジャーも終盤に差し掛かり、大きな壁に直面していた頃。

正確に順序関係の記憶は無いが、かなりもがき苦しんでいた時期で、その打破のために基本に立ち返る等の様々な試行錯誤を行う過程で古典名著も読んでいたと思う。
読んでいて、ふと、それまでバラバラに捉えていた組織のメカニズムのようなものが、何か一つに繋がるような感じを受けた。アニメで出て来るシーンのように、ガチャガチャっと全てが結び付いて行くような錯覚。

これが、自分自身のコンサルスタイルが大きく変わり、また、大きく変わったと当時のパートナーからも評価されるようになった時期。
(その際、それまでに「役に立たない」と思って捨てていた古典名著を再び買い集め、一気に読み進めた覚えが有る)

その時に初めて読んでも同様のことが生じたのかも知れないが、若い頃から幾度か読むことで、自分自身の中の変化に気付けたことは非常に貴重だったと感じている。

古典名著は、特に若手の目先の仕事には殆ど全く役に立たないことが多い。
そのため、仕事に追われた状態だと読む時間を取るのはどうかとも思う。それよりも先に学ばないといけないものが多いと思う。そちらを優先すべき。

しかし、GW位はそのような時間に充てても良いのではないかと思う。

なお、「ビジネス書」ではないが、ビジネスに関連する超古典名著。

それぞれ非常に有名な本だが、ここまでは普段はなかなか手を出し辛いので、この機会に読んでみるのも良いのではないかと思う。

■ クラウゼヴィッツ「戦争論」

(いきなり読んで挫折しそうな人はこちらから・・・。)

■ マックス・ヴェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」

■ 渋沢栄一「論語と算盤」

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