視点を切り替えるために「アナロジー力」を高める

コンサルタントにとって「視点を切り替える」ということが非常に重要なことだと考えている。
企業における問題などに向き合っている際に、「常識的」と言えるような切り口からそれらを眺めていても、何も始まらない。
特に「業界の常識」で見ている限りは、顧客と同じ思考に留まってしまう。

視点を切り替えることで「常識」を疑い、発想を拡げる。
こういったことが必要となる。

この際に重要になって来るのが「アナロジー」だと思う。
ある事象を見ている際に、例えば他業界での事例に照らす。もしくはビジネス以外、例えば歴史や生物学などの事象に照らす、等々。

この「アナロジー力」とも言えるような能力の高低は、コンサルタントとしての能力の高低にかなり大きく関係すると考えている。

このアナロジー力は、必ずしも経験の長いコンサルタントが長けているというわけではない。
勿論、他業界での事例に繋げることについては経験が長い方が優位なのだが、それ以外に関しては、むしろ経験の浅い若手の方が気付きの多いアナロジーを示して来たりする。

アナロジー力を高めるために必要なことは何か。

まず大前提として、かなりの量のインプットが必要になる。
少なくとも、プロジェクトに直接関係の有るインプットしかしないようだと、アナロジー力はいつまで経っても高まらない。
基本的に、アナロジー力が高い人というのは「雑学王」的な存在になる。「そんな知識、何で持っているんだ?」というような印象を受ける。

「インプット」と言うと「本を読む」ということに繋げる人も多いが、それだけに限らない。テレビ番組なども当然だし、様々な店などに訪れることも重要。
ただ街を歩いているだけでも、店頭のディスプレイや様々な屋外広告等々、脳を働かせるインプットは非常に多い。
これらを意味の有るインプットとするのか、単に眼と脳を通り過ぎる情報とするのかは、アンテナが立っているかどうかだと思う。

普段は他人が履いている靴を気にしなくても、自分が「どの靴を買おうか」と考えていると、妙に目に入って来たりする。アンテナが立っていると引っ掛かる。それがインプットには重要。
コンサルとしての能力を高めたいのであれば、少なくともプロジェクト中、本来は四六時中、生活の中で常にアンテナを立てておく必要が有ると思う。

ちなみに、私は「本を読む」ことでのインプットはかなり効率が悪いと感じている。
それよりも知識の有る友達や同僚と話す方が圧倒的に効率が良い。

インプットだけでアナロジー力が高まるわけでもない。
「抽象化」が必要なのだが、抽象化自体が「どの幹を残して枝葉を切り落とすのか」ということが無いとできない。
(勿論、枝葉の落とし方を知っていることは前提として)

抽象化では先に幹を決めることが必要。

アナロジーは、必要に応じて蓄積されたインプットの中から使えそうなものを引き出し、その場で幹に対して枝葉を落として引き出すということも有る。
しかし、これが使えるのは、自分が強い興味・関心を持っている領域のインプットだけではないかと思う。
大学時代の専攻分野であったり、転職前の業界であったり、自分の趣味の分野、等々。

少なくともアナロジー力が弱い人が「先にインプットを蓄積し、必要に応じてそのインプットを用いる」ということをやるのは、最初からは難しいと思う。
先に自分がアナロジーを用いたいこと(=幹)を明確にし、インプット時にその幹に対してぶつけて「これはアナロジーとして有効」という視点で取捨して行く。
こちらの方が良いように感じる。

そのために、自分の中で常に「テーマ」を持つことが必要だと思う。
インプットを常に持っているテーマに対してぶつけ合わせることで、「あ、こういう風に考えると使える」というようにアナロジーを引き出す。

「テーマ」としては目の前に有る案件の中の問いが成り得る。案件の中で課題となっていることに対して有効なインプットを取捨する。
しかし、この効果は小さいと思う。アナロジーは多分に偶発的なもの。引き出される可能性が低い。
案件で考えていることについて、案件の期間中のインプットだけで有効なアナロジーが引き出されることは多くはない。

必要なのは、常に何かしらのテーマを自分の中で定めることだと思う。
例えば「新規事業を上手く立ち上げるために、組織はどうあるべきなのか」といったようなもの。このようなものを自分の中で幾つか持つ。

これは別に四六時中意識する必要は無い。自分の中での関心毎を「問い」として言語化しておくだけで良いと思う。
これをするだけで、本を読んでいる時、テレビを見ている時、友達と話している時・・・様々な場面でふと「これって、こういうことじゃない?」という気付きを得るためのアンテナの感度が高まると思う。

こんなことをずっとやっていると、自ずとインプットの蓄積は増える。
そのうち、今度は新しい問いが目の前に出て来た時に、過去のインプットからアナロジーを引き出せるようになるのではないかと思う。

アナロジー力の弱い人を見ていると、枝葉の落とし方(=狭義の抽象化力)の欠如や、インプット量の絶対的な不足は論外として、多くが「アンテナの感度が弱い」ということが要因だと感じる。
何も考えていない。「問い」を自分の中で持っていない。

アンテナの感度が弱いままだと、戦略コンサルとしては厳しいと思う。

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