書籍録「昭和天皇物語」

Twitterで慎正宗さんが取り上げていらっしゃったので、早速購入して読み始めたのだが、非常に面白く、一気に既刊分を読み終えてしまった。

タイトル通り、昭和天皇の生い立ちから描かれた物語で、最初のうちはそうでもないが、徐々に昭和史に至る裏の部分に踏み込んで行く。

現在は6巻まででまだ伏線という感じだが、この話の感じだと恐らく、2.26事件が最初の話の山場になるのではないかと思う。そこでどのように描かれるのかが非常に楽しみ。

但し、「歴史の勉強」として読むとすると、この本だけではかなり偏った認識のみが入って来てしまうと思う。

この本に限らないが、歴史の本は著者による解釈がかなり大きく影響する。
人物像にしても、例えばこの本でも取り上げられている乃木希典は、元々は名将という認識だったと思うし、今でもそのような認識を前提とした書籍も多いが、司馬遼太郎の作品内では完全なる愚将という取り扱いになる。(そして、司馬遼太郎の作品が流行ることで、ネガティブな認識が結構広まっていると思う)

その中でも特に、昭和天皇であったり、太平洋戦争に至る経緯等については、明らかになっていないものが多過ぎる。まだ明らかにできないと思う。
これらが明らかになるには、昭和を終えて約30年、終戦から75年程度というのは短過ぎる。恐らく、私の世代が生きているうちには難しいと思う。

この時代の歴史については、様々な視点から述べられた本を読み、自分なりの解釈を組み上げて行くしかないと思う。

この本も、あくまでも「一つの解釈」という前提で読む必要が有る。
しかし、少なくとも、この混とんとした時代の流れが分かり易く、面白く読めるのは非常に良い。お勧め。

なお、原作は半藤一利氏。

まず、この方の「昭和史」は必読。

日本人が歴史を学ぶ中で、最も重要なのがこの時代。太平洋戦争に至る道のりと、終戦からの立ち上がり。
この時代が、読み易い形で書かれている。

加えて、「面白い」という点では「昭和史」以上だと私が感じるのが「幕末史」。

通常の幕末史は「薩長が正義」という視点で描かれている。
これは、「歴史は勝者によって書かれる」と言われるように、明治日本を作った薩長による歴史研究・教育の結果。

この本は真逆から書いている。
西郷隆盛をここまで否定的に書いている本も珍しい。

但し、この本こそ「偏った解釈の極み」なので注意。

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