書籍録「経営戦略概論」

twitterの中で「戦略と組織は一体で議論した方が良い」という書いた際、

  • ビジネスモデルというコンセプトが登場して来た2000年頃から「戦略と組織の融合」が起きて来ました

ということを著者の波頭亮氏にご指摘頂き、そういうことか、と感じた。

その際に、その辺りの企業戦略の方法論的シフトについて書かれている、と教えて戴いたので早速購入して読んでみた。

この本では第Ⅰ部で、戦略論の研究の流れと、過去の有力な学説の簡単な内容およびその背景がまとめて書かれているのだが、戦略論を学ぶ前(=コンサルタントになってすぐ)にここの部分は読んでおいた方が良いと思う。

例えばポーターとバーニー、ミンツバーグといった戦略論の書籍は、戦略コンサルタントとしてある程度の年数を経験した人であれば恐らく皆が読んでいる。
一方で、では、この3者の戦略論は何が違うのか?と聞かれると、それを簡潔に説明できない人も少なくないと思う。

これらが体系的に説明されているので、頭を整理した上で各戦略論に進むことができる。そうすると、理解度などが格段に高まると思う。

そして、著者もあとがきで触れているが、この戦略論の研究の流れと戦略コンサルタントの案件のその時々の主流が同期している。

第Ⅱ部で

  • システマティックからヒューリスティック
  • ハードからソフト
  • スタティックからダイナミック

という戦略論の潮流の変化について書かれているが、戦略コンサルタントの変質も当然だがこの流れに乗っている。

恐らく、「戦略コンサルタント」についてのイメージ自体が前時代的なもので留まっている、ということがこの本を読むと理解できると思う。「戦略案件」という表現がポーターの時代の理論のイメージに近い。システマティックでハードに着眼して、と。
(勿論、ポーターの理論についても否定するものではなく、未だに状況に応じては非常に有効)

しかし、今の時代に戦略コンサルタントが考えるべきことは異なると思う。私は戦略コンサルタントは戦略と組織を同時に考えることが必要と感じているのだが、この理由を明確に説明できる(逆に言えば、今まで明確に説明できていなかった)。

そして、戦略コンサルタント個人としても、成長過程でこの順序で悩み考えるのではないかと思う。

最初はまずカチッと型にはまった外形的な解を出せるようになることが必要。しかし、それだけだと全く価値が出ず、どんどんとソフトに入り込んで・・・と。

ちなみに、この本の中でリーダーシップ論についても戦略論の一部に組み込まれていて、なるほど、と思った。

私はリーダーシップ論はかなり体系的に学んだのだが、何となく戦略論とは別物、と捉えていた。しかし、戦略と組織の融合の先に「リーダー」の議論が位置付けられるのは至極自然なこと。

戦略論を学ぶ上で全体観を把握する「地図」として、そして、戦略コンサルタントという道を歩む上での「羅針盤」としての役割として、非常に有意義なのでお勧めしたい。

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