「答え」は論理的に導かれているわけではない

例えば顧客に対する、ある市場から撤退すべきか否か、という提言をする場合。
「撤退すべき」か「撤退すべきでない」という、いわば「答え」をコンサルタントはどのように導いているのか。

「戦略コンサルタントは事実と論理に基づいて考えている」というよく聞かれる表現。

これに従うと、徹底的に事実を集め、それを基に論理をしっかりと組み立てて「答え」に帰着していると考えるかも知れないが、これは誤りだと思う。

勿論、徹底的に事実を集める。論理的に物事を考える。

しかし、最後に重要なのは、実はコンサルタント本人の「勘」と言うか「感」。
正確に言えば、先に感覚的に「答え」を導き出し、後から裏付けとして事実と論理を用いる。

「答え」については恐らく、同じファームのパートナー数名が集まり、全く同じ情報(事実)を見たとしても、意見が分かれる場合が有ると思う。

例えば、前提として「その市場での顧客満足度は20%(業界平均は60%)、獲得出来ているシェアが1%(トップは40%)」という情報が有ったとする。
(勿論、これだけで判断するようなことはしないが、あくまでも例示として)

これを見ると、「勝負になっていないから、他の強みを示せている市場で勝負すべき」と考えることもできるし、「まだまだ改善の余地が有って伸びしろは大きい」と考えることもできる。

この情報だけでは何も言えないが、どれだけ情報を詰めて行っても、実は最後の「解釈」(数字の見立て)の部分では感覚的なものが大きく作用する。

最終的な「答え」を裏付ける論理は正直、どうにでも組み立てられる場合が多い。

勿論、「これは違う」という明確な否定ができるものも有るが、「どちらとも言い切れない」という場合が多い。点数で言えば「51点対49点」のようなもの。しかも、2-3点は再審議が必要・・・というようなレベルの差。

言い換えると、これが故に、戦略コンサルタントの価値は有ると考えている。

仮に、本当に事実と論理だけで結論を導き出せるのだとすると、AIでの代替というものが現実的になって来るかも知れないが、恐らく無理。

それ故に、メッセージを固める際はかなり悩むことが多い。「本当にこの提言で良いのか」という点について。
自分の「感」に従っているものの、一抹の不安を覚える。

この提言を出した時に顧客はどのように反応するのか。この提言通りに顧客が動いた時に本当に上手く行くのか・・・等々。

とにかく、しっかりと事実を調べ上げ、論理を固めることは大前提。キリが無いけど、やるしかない。

その上で、最後は頼れるのは自分の「勘」、「感」のみ。腹を括るしかない。

この「勘」なり「感」こそがコンサルタントの個性で、顧客にはここに価値を感じてコンサルタントたる自分自身を「買って」頂いているのだと思う。それが単なる「業務受託」との違い。

そうすると、これらを磨くことが「修行」を通じてコンサルタントが磨き上げることだと思う。

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