「戦略系」と「総合系」での「レバレッジ」の考え方についての違い

当初、質問を受けていた「コンサルファームにおける『優秀』の定義」ということについて書こうとしていた。
しかし、それを考える上で前提の整理が必要であり、それが、昨日から感じていた違和感と繋がったので、こちらをまず先に。

違和感を覚えたのは、Twitterで書いた下記の点について。

 TokyoSwing氏の「個人商店」に関する記述について、私も各ファーム共にここからの脱却を志向し、ある程度の歩みを進めていることは理解している。

一方で、「戦略系」と「総合系」の間で明確な違いが有ると、これもかなり強く感じている。

自分自身で「振り切れていない」と書いた。しかし、何となくこの表現は違っており、そもそもの考え方が違う、というように感じ始めた。
「振り切れていない」というのは、志向が同じである中で、総合系の方が進んでいるということ。しかし、そもそもの志向が異なるのではないか、と。

これが何となく違和感となっていた。

ここでの違和感について、「レバレッジ」という視点から考えると良いのかも知れないと感じた。

戦略系ファームについて「個人商店の延長」と表現したのは、戦略系各社のレバレッジのかけ方が、基本的にはパートナーの「個」に対してかけていると感じているから。
戦略系ファームの顧客に対する提言については、パートナーの個性であったり価値観が強く影響すると感じている。恐らく、同じ案件の同じ状況で2人のパートナーが個々に提言内容を考えた場合、全く異なる提言が出て来ることも生じ得るし、それで正しいと考えている。

総合系ファームよりもフィー水準が高いのは、これが最大のポイントではないかとも思う。
つまり、戦略系ファームでの価値の源泉はパートナー(もしくはプロジェクトを主導する人)の「個」であり、この「個」を切り口として収益をどう大きくするのか/安定させるのか、という考え方で組織やナレッジ、ソリューションの拡充を図っていると考えている。

パートナーは、「個」の競争力を高めるために組織やナレッジを用いるし、また、派生した収益機会を得るためにソリューションを用いる。

一方で総合系ファームについては、価値の源泉自体がソリューションになっていると考えている。「個」に依存しないビジネスモデルになっている(もしくは追求している)。

顧客への提言の中での「個」の介在が極めて薄い。

この時、総合系ファームでのレバレッジとは、パートナーなどの「個」ではなく、「ソリューション」にかかっていると思う。
如何に拡販できる汎用的なソリューションを開発するのかを追求し、それを徹底的に拡販する。パートナーもマネジャーもスタッフもその目的を念頭に動いている。

なお、あくまでもこれは端的に対立構造で示しただけで、実態としてはそれぞれがこの間に位置しているとは思う。これは以下についても同様。

この差が最も顕著に表れるのが「営業の考え方」だと感じている。

戦略系ファームは「顧客」を起点とした発想が比較的徹底されていると思う。
ある顧客について、何が課題で何をすれば良いのか、ということを考え提言する。そこに組織として蓄積された知見を活用したり、有しているソリューションを提供するという形を取る。

一方で総合系ファームは「ソリューション」を起点とした発想の方が強いと思う。
汎用的に展開できる「ソリューション」が出来上がると、「それが『はまる』顧客はどこか?」という視点で営業を展開する。

ちなみに、「ソリューション」という単語の持つイメージが、戦略系と総合系で随分と違うと感じている。総合系での「ソリューション」の方が、かなり定型化(テンプレート化)がされている。

本来的にプロフェッショナルは個人勝負。

しかし、

  • 信頼性の向上(ブランドの確立)
  • 安定性の確保(互助)
  • 専門性の相互補完
  • 規模への対応

といったことを目的に組織化が進んできたと考えている。本来的には「個」なのだが、組織化することに一定の価値を感じているが故に「同盟」を組む。
収益も、パートナーの個々の収益の総和がファームとしての収益であり、個々の収益を極大化するために組織を活かす、というスタンスが強い。

これが「パートナーシップ」型組織の本来の意味だと考えており、今でも戦略系各社はこの延長線上に有ると思う。組織化の意義はより広くなっており、もはや本当の「個人商店」に戻ることは不可能であるが、究極的には「個」の勝負。

一方で、特にアクセンチュアなどは完全にここから抜け出していると感じている。

あくまでも究極的な話として。

法人へのコンサルティング以外のソリューション型サービスで極めて高い営業能力と組織運営能力を有する人材が居るとして、この人がファームのパートナーに転職をして、セールス面において短期間で実績を上げることが出来るのか。(売れるソリューションを開発する、という視点は別)

アクセンチュアであれば出来ると感じている。勿論、いきなりその日から、と言うものではないが、比較的短期間で成果を上げられると思う。

一方で戦略系各社でそれが成り立つかというと、ひょっとしたら一部のファームはできるかも知れないが、殆どのファームでこれは無理だと思う。

戦略系ファームのパートナーは、コンサルタントとしてのかなり高い能力が前提になっている。

・・・と、ここまで書いてはみたが、「違和感を言語化する」という点で質がかなり低いと感じている。まだ自分の中で、「これ」という答えに落ち切っていない。

とは言え、取り敢えずの考えとして記録しておく。

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