育成観点でのBDD案件へのアサインの意義

Twitterで触れた、BDD(Business Due Diligence)案件について。

 

BDDは好き嫌いがはっきり分かれるが、どちらかと言えば嫌う人の方が多いのではないかと思う。

確かに、短期集中勝負であり、それ以上に顧客がファンドという非常に能力水準が高い(かつ、コンサルを熟知している)存在であることで、肉体的にも精神的にもかなり厳しい状況に置かれることも多い。

 

一方で、私自身もかなりの数のBDDを経験したが、育成という観点で非常に得られることが多い案件だとも思う。

「楽しめ」と言ったところで難しい人も多いということは理解している。

しかし、「成長したい」と感じるのであれば、「楽しんで」とまでは行かなくても「前向きに」程度には取り組んで欲しいという思いが有る。

 

 

書いた通り、BDDはアナリスト教育にとって非常に有効だと思う。極論すれば、コンサルタントになって1年程度はBDDにだけ浸かっていても良いと感じる位に。

ハードスキルを身に付けるという観点で、非常にオーソドックスなスキルが求められることに加えて、要求スピード=プレッシャーも強くなるので、ストレッチがされる。

「作業」という観点で言えば、これだけの密度で、コンサルのアソシエイト/アナリストレベルで求められるスキルを網羅的に学べる場は他にないと思う。

スタッフでBDDにアサインされたら、「コンサルタント養成学校に入学した」といった気持ちで取り組むと良いと思う。

「BDDが好き」と言ってしまうと、ファームによっては延々とBDD・・・ということも生じかねないが、1案件だけであれば短期間で終わる。終わりが明確に見えるのもBDDの良い所だと思う。

 

一方で私が感じるのは、アナリスト以上にアソシエイト後半の「プロジェクトマネジャー入門者」にとってBDDが恰好の材料になるということ。

 

BDDの性質として

  • 基本的に「理」で押し通せる
  • 短期集中で様々な業界等を見ることが出来る
  • 放っておくと膨大な作業量に埋もれる

ということが挙げられると思う。

 

まず、顧客がファンドという、謂わば「プロ」が相手。

コンサルタントの仕事、特にプロマネという立場で難しいのは、「理」だけでは通じない時。「情」も含めて相手と組み合うことが必要なのだが、いきなりそこまで要求されても難しい。

成長のステップとしては、まずは「理」で攻めることが出来ること。それが出来た上で「情」の部分を磨くことが必要だと思う。しかし、BDD以外の案件だと「理」と「情」を切り離すことは難しい。

その点、BDDは明確に「理」。

顧客に受け入れてもらえるか否かは(実際には「情」も多少は絡むが、圧倒的に)「理」にかかっていると言える。

BDDをしっかりと着地させられるようになれば、プロジェクトマネジャーとしての態勢は整った、と言えると思う。

 

経験値を積むという点でも良い。

非常に短期間に、その業界について一気にまとめた知見を得られる。格好のケーススタディ課題のように感じる。

戦略眼に長けたパートナー等と組めば、「企業/戦略を見る目」がかなり養われると思う。

 

加えて、最も大きな点。

 

BDDが大変なのは「放っておくと作業量が膨大になる」ということが大きいのだが、実はこれはプロマネの裁き方(裁く能力)に依っている部分が大きいと思う。

基本的にBDDの場合、精査ポイントをある程度ファンド側から示されることが多いが、実際には本筋から言えば精査の重要性がそれほど高くない場合も多い。

ファンドからの要求をそのまま受け入れてしまっているうちは作業に追われて地獄を見るが、レベルが上がって来ると、ファンドの要求をコントロール(切り捨てること)ができるようになる。

プロジェクトの早い段階(理想的には提案段階)で、ファンド側担当者と精査ポイントを詰め、とにかく見るべきポイントを絞る。これがBDDを「楽に」回すための絶対条件。

 

これは、どのような案件にも言えることで、結局のところ、「主導権をどちらが取るか」と言うことだと思う。

プロジェクトマネジャーに求められているのは「主導権を取る」こと。

この訓練の場として、「理」で勝負できるBDDは非常に適していると感じている。

 

 

私は、BDDを数多く経験する中で、プロジェクトの進め方についてかなり学んだと感じている。

特に、主導権を取り、スコープを絞ることで作業量を削る、という点。

慣れて来ると、プロジェクト開始~最初の1週間程度でバサバサと作業を切ることができるようになった。

ファンドによっては「取り敢えず網羅的に見たい」というような意向も有るので、そのような場合には、注力ポイントとそれ以外を明確に切り分けるということ。優秀なスタッフと自分の時間を注力ポイントに絞り込み、能力の低いスタッフを「その他の部分を飾る」ために使う、というようなことを意識した。

 

とは言え、これでもBDDはハードになる。

注力ポイントを絞っても、他の顧客であればある程度「ザックリ」で行ける所が行けない。とにかく突き詰めることが必要。また、私の性格でもあるのだが、余裕が有るなら品質を更に高めたい、という気持ちが働く。

しかし、これはコンサルタントに本来求められている役割なので、避けて通れないことと感じている。(ビジネスとして考えるなら「割り切る」ことも必要とは認識しているが)

逆に言えば、他の顧客で、何となく小手先でごまかすような癖が付いてしまっている場合に、それを矯正するという点でも良い。初心に立ち返れる。

 

ちなみに、慣れて来るとBDDだけで数案件並行で回す、といったことが出来るようになる。しかも、結構余裕が有ったりする。

その頃にはBDD卒業でも良いかな、と思う。

 

しっかりとした上位者についてのBDD案件は、「学びの場」としての価値は非常に高いと思う。

アサインされたら、是非前向きに臨んで欲しいと思う。

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