適切な言葉を選び認識と思考を誘導する

昨日、Twitterで書いたことに絡んで。

 

 

コンサルタントにとって言葉は唯一の武器。

以前に「言葉を駆使して相手を動かす」でも書いたが、両手足を縛られた状態で、言葉だけを使って相手を動かすのが戦略コンサルタントの仕事だと考えている。

そのため、どの言葉を選ぶのかは非常に重要なこと。

 

昨日のTwitterでは、「横文字」を起点に書いた。

コンサルタントは横文字を多用する、というのは、やや馬鹿にしたような意味合いを含んでいることが多い。確かに、無意味に横文字を多用するコンサルタントも中には居る。

しかし、別に横文字を使うのが悪いというわけではなく、日本語を使うよりも適する場合も少なくない。

 

まず、既に日本語として一般化している横文字を、敢えて日本語訳するのは意味が無い。

これについては以前、文部科学省が「外来語の言い換え提案」のようなものを出したが、無理に日本語訳をすると意味分からなくなるので避けるべきなのは当然。

「オンデマンド」のことを「注文対応」と書かれても、「それってオンデマンドのことですか?」と聞かれてしまうと思う。

(参考)平成16年度文部科学白書 [資料編 17]

経営に関する用語などはかなり限定した意味を持つ場合も多い。変に日本語訳を使うと意図したものと異なった意味合いに捉えられるリスクも有るので気を付けた方が良い。

 

一方で、日本語訳を使っても意味としては同じだが、伝わる際の印象が変わることが有る。

例えば、Twitterで書いた「イニシアティブ」は「主導権」という言葉を使っても意味としては成り立つのだが、やや言葉として強い。

「イニシアティブを取る」の代わりに「主導権を取る」という表現をすると、局面次第だが相手がギョッとしかねない。

 

「横文字か日本語か」のような議論になり易いのだが、この議論は意味が無い。

言葉を使うのは「認識する」、「考える」、「伝える」という3つの目的のため。言い換えると、この3つの目的に即しているのがどの言葉なのか、ということ。横文字の方が適切であれば横文字を使うべきだし、日本語の方が適切であれば日本語を使うべき。

 

特にコンサルタントはこの点についての感度を上げる必要が有る。

なぜならば、コンサルタントの仕事とは「伝える」ことにより、相手の「認識する」と「考える」ということをコントロールし、最終的に行動に繋げること。

つまり、「どのような認識を持たせるのか」、「どのように考えさせるのか」が言葉を選ぶ際の基準となる。

言葉選びを誤ると誤解や変な議論を生んでしまったりする。

 

言葉を置く時には、「相手がどのような意味で受け止めるのか」と同時に「相手がどのような印象で受け止めるのか」まで意識することが必要。

 

相手に深刻に受け止めて欲しいのであれば、敢えて強めの印象を持ち易い言葉を選ぶことが必要。ここで柔らかい印象の言葉を用いると軽い受け止め方になりかねない。

一方で、例えば協力を得たい場合などに強めの印象の言葉を用いると誤った認識を生み、得られるはずの協力も得られなくなったりする。

 

戦略コンサルタントの仕事は、とにかく言葉をしっかりと選び、その言葉を使って相手の認識と思考を誘導することに尽きる。

ちょっとしたニュアンスの違いにより相手の受け止め方が変化し、最終的な行動は大きく変わる。

言葉に対する感度と言葉を選ぶ能力は、意識して高めることが必要だと思う。

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