在宅勤務ではなくわざわざオフィスへ行く理由

私は日頃から在宅勤務を基本としている。意味も無くオフィスに行くことはしない。

これは若手の頃からの習慣で、自宅でできることを通勤時間という無駄な時間を費やしてオフィスでやる意味を感じないことに加え、自分の作業に要している時間を周りから見えないようにする(余裕が有るように見せる)という意図が有った。

 

しかし、前職の戦略系ファームに移って数年はオフィスに入り浸っていた。

この最大の理由は、同僚との雑談や案件と無関係な議論が極めて刺激的だった、ということが大きい。通勤時間を費やしてでも行く価値が有った。

雑談などに費やしていないで仕事しろ、と言われれば確かにその通りなのだが、ここでの雑談や議論が私にとってかなり大きな刺激になったのは間違いない。

自分自身では、コンサルタントになって以降かなり勉強したつもりで居たが、広さも深さも次元が違うということを思い知らされた。とにかく「勉強しないと全く通用しない」と身に染みた・・・。

 

私は戦略系ファームにアソシエイトで入り、翌年にはマネジャーに昇進した。この点を見ると、案件を進める能力自体は総合系で培ったものである程度足りていたのだと思う。(マネジャーになって以降もかなり苦労したので十分ではなかったのだろうが)

しかし、その頃まさに「勉強しないと全く通用しない」と痛感した。そして、今振り返ると、この感覚を持たず、徹底的に勉強し直すということを行っていなかったら、多分マネジャーで終わっていたと思う。

 

学校が「勉強を学ぶ場」という意味だけではないということは異論が無いと思う。

これに近い性質がファームに有るように感じている。

 

在宅勤務でも案件は回せる。故に、オフィスに行く意味が無い。

このように感じられるファームだとすれば、それはファームとしての意味を無くしつつあると思う。

 

コンサルファームの場合、そのファームに属する必然性というのは非常に希薄。

一つには「ブランド」が有るが、コンサルファームでブランドが重視される理由は転職することを意識してだと思っている。ファームに属し続ける上では、確かに営業面で多少有利に働くけど、それ以外にあまり意味は無いと思っている。

他にあまり無いが、その中で唯一、そのファームに属する意味が有るとすれば、「場」としての価値を感じられる時。

自分が「楽しい」と感じ、「高められる」と思える、そのような場であると感じられて初めて、そのファームに居続けたいと感じる。

 

多様な視点を持つ優秀な人材(素材)が集まり、相互に刺激し合う。

そうすると、素材それぞれの個性を残しながらも、ある意味同じような味わいが出て来る。そして、それは素材状態よりも遥かに美味い。

これがファームとしての個性のようなものになる。

特に必要だと思うのは、同じ世代同士での刺激だと思う。ライバル関係でもあり、仲間関係でもある同世代が刺激し合い、認め合い、高め合うことが重要。

同世代(特に優秀な人同士)が案件で一緒になる機会は決して多くはないと思う。しかし、同じオフィスで仕事をしていると、何となく感じられるところが有る。お互いの日々のちょっとした会話も、少し「探り」を入れながら、危機感を受けたりもする。

次第に、同じような特性を持ちつつも、それぞれの個性がプンプン匂う2人のコンサルタントが出来上がる。

そんな化学変化が重要。

 

オフィスはこのような化学反応を起こすための、物理的な「壺」のような役割を果たしていると思っている。

 

単に優秀な人を集めてできるわけでも無い。ましてや人数を集めただけでは結局は烏合の衆で終わる。これだけだと、個々の目的が達せられたら離れて行く。

 

勿論、毎日オフィスに行く必要は無い。

しかし、効率だけを考えて論じることでもない。

 

ファーム経営側は、この点についての見つめ直しが必要だと感じる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です