「戦略系」と「総合系」

コンサルティングファームを分類する方法として、何か言っているようで何も言っていないような区分である「戦略系」と「総合系」。

最近では戦略系ファームが総合系ファーム寄りに、また、総合系ファームの中でも部門によってはかなり戦略系寄りにシフトしていると感じている。
「違いが無くなって来ている」というようにも感じる。

しかし、私はその双方、それぞれの立場を経験して来たが、両者には歴然とした差が有ると感じている。

昔は「総合系」ではなく「会計系」と呼ばれていた。そのため、当時は「戦略系」と「会計系」という構図。他に人事系なども有った(今でも有る)が。

この時代は比較的違いが明確だったと思う。戦略系は戦略および組織マターが中心、会計系は基幹システムを担いで経営管理マターが中心。会計系ファームの中で戦略部門というのは中途半端な位置付けだった。

ちなみに、会計系ファームのマネジャーだった時、新規事業案件を受注したことが決まった直後にSAPチームの面識の無いパートナーからいきなり電話が来て「この案件、パッケージは何を想定しているの?」と聞かれた。システム案件に繋がることは無いと答えたら「だったら、こんな案件、何の意味が有るんだよ!!」と怒鳴られたことが有る。

この程度の存在だったということ。

時が経て今、「戦略系」と「総合系」は何が違うのか。

恐らく、やっていることは非常に似通って来ていると思う。

さすがに戦略系ファームでERP担いで売り歩く所は無いと思うが、総合系ファームの戦略(もしくはそれに類する)部門だと、戦略系ファームと案件の「区分」程度では正直大差無い。

両者の違いは、「人材の質」と「案件に対するスタンス」だと思っている。

人材の質の違いはかなり大きい。これは、「平均値の水準」、「極めて優秀な人の発生確率」、「『使えない人』の発生確率と水準」のいずれもが大きく違う。

平均値については、総合系ファームの「かなり優秀」と言われる人の水準が戦略系での「平均値」位の感覚。戦略系でほどほどの人であれば、総合系ファームでほぼ例外なく「かなり優秀」と評価されると思う。逆に言えば、総合系で「かなり優秀」レベルだと、戦略系に移ると「平均程度」に陥る可能性が有るということ。

(但し、この話はマネジャー以下であることが前提。パートナーに準ずる立場以上になると評価軸が異なるので話が変わる)

また、総合系から戦略系に移った際に非常に強く感じたのが、「極めて優秀な人の発生確率」。確かに総合系にも「何でこんな優秀な人が居るんだ!?」と感じるようなレベルの人が居る。今のうちの部門でも、マネジャーに一人居る。

しかし、戦略系に暫く属していると、そのような人を「見慣れる」。むしろ、それを超越するような途轍も無い人が出て来る。今のうちの部門に居るマネジャーも、恐らく戦略系に移っても「優秀」とは称されると思うが、恐らく「極めて優秀」という評価にはならないと思う。

この点は少し補足が必要だが、総合系に居る「極めて優秀」な人が、資質の面で戦略系ファームにおいて「極めて優秀」という評価にならないということは無い。恐らく、資質についての差は無い。

違いが生じるのは育成の徹底度合い。戦略系と総合系で、特にスタッフレベルでの育成はかなり大きく違う。戦略系では、極めて資質の高い人材が、徹底した指導を受け、しかも横並びで切磋琢磨している。

恐らく、総合系の中に居ると、自社もそれなりに鍛えられる環境だと感じる人も居ると思う。他社を知らなければ仕方ないが、これはかなり違う。(とは言え、最近は戦略系でも緩い所が出ているようだが)

どのような仕事でも、若手時代をどのような環境で育つのかは非常に大切な要素。元々優秀な人材が、徹底的に鍛えられる環境に身を置けば、そこで差が付くのは当然。

逆に、そのような環境を経ずにマネジャーになってしまうという当社の状況を見て危惧している。優秀な人材はやはり早い段階で移るべき、と非常に強く感じる。

「『使えない』人の発生確率と水準」は・・・割愛。

「案件に対するスタンス」について。

これは案件を率いるパートナーやマネジャーによっても差が有るし、最近では戦略系ファームもかなり変質しているので、その差は薄れているかも知れない。

しかし、全体的な傾向として、戦略系よりも総合系の方が「パッケージ化」を意識した案件の仕立てをする傾向が強いと感じる。「パッケージ化」は、言い換えると「能力が高くない人でもできる案件を作り出す」ということ。

これは、パートナーの意識の違いとも繋がるとも考えており、営業担当者でありつつもコンサルタントとしての自負のようなものがある戦略系のパートナーと、営業担当者という性質だけが非常に色濃い総合系のパートナー。

これは、マネジャー時期の成長の差に繋がるような気がしている。

結局、これも育成面の影響であって、「コンサルタントを育てる」のか、「営業担当者を育てるのか」という違いかも知れないが。

単なる区分の違い。しかし、特に若手時代を過ごす場として、明確な違いが有ると感じている。

総合系に身を置く立場で言うのもどうかと思うが、総合系で評価が高い人であり、かつ、コンサルタントとしての成長を追求したいのであれば、戦略系ファームに転じることを真剣に目指した方が良い。

これは絶対だと思っている。

とは言え、戦略系ファーム自体が志向が変わり、かなり変質しているのも確か。
(下記記事参照)

しかし、総合系ファームは更にその傾向が強いように見て取れるので、「戦略系」と「総合系」の相対的な差は変わりない(むしろ大きくなっている)と思う。

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