先日、Twitterで書いた下記の件について。
マネジャー昇格までならば、200億年の道のりに見えるが、実はみんなある所でどこでもドアを使っている。途中までシンドイ思いをしてたのに見付けると「なんだ」と思う。
問題はそれを見付けられるか否か、そしていかに早く見付けるか。
仮に見付けられないと、200億年費やしても辿り着かないと思う。 https://t.co/mD8HouhqEi— 小暮 隆(仮名) (@KogureTakashi) 2020年5月18日
ファームにおけるコンサルタントのキャリアは大きくスタッフ、マネジャー、パートナーという形で進んで行く。
この点について、本来のコンサルタントという仕事で言えば、「パートナー」と「スタッフ」という2階層しかないと考えている。「マネジャー」という職位は実は非常に曖昧なもの。
とは言え、今日の主旨からは外れるので、これは改めて書きたい(と思ったことが以前にも有った気がするが、全ては思い出したら書く)。
ファームに入った人がまず目指すステップであり、かつ、日常的に多く接する「マネジャー」という立場。
マネジャーの役割は、ファームによって結構違う。
大きくはファーム毎の
- パートナーの案件受注後の関与度の違い
- 営業責任の有無の違い
によって、何が/どこまで求められるのか変わると思う。
とは言え、スタート地点について言えば大きく変わらない。
その時、スタッフとして着実に歩みを進めていればマネジャーに辿り着けるのか、という点について。
昇格要件についての考え方(スタッフとして十分な評価であればマネジャーに昇格させるのか、マネジャーに必要な要件を満たして初めてマネジャーに昇格させるのか)によっても多少変わるとは思うのだが、基本的に「マネジャーに昇格する」ということだけであれば、スタッフとして着実に歩んでいれば殆どの人は達することが出来ると思う。
以前書いた記事内でも述べたのだが、マネジャー手前まではそこまでセンスは問われない。
確かにスタッフとしては優秀だが、マネジャーとして決定的に欠ける要素が有る、ということで昇格を見送るケースも有るのだが、殆どの場合、スタッフとして十分な評価が得られていれば取り敢えずマネジャーに昇格させる。
しかし、「マネジャーに昇格する」ということと「マネジャーが務まる」ということは、全く異なると言って良いと思う。
これは、「マネジャーに昇格する」は言ってみれば「スタッフとしてゴールした」ということに過ぎず、そこから「マネジャーが務まる」=「マネジャーとしてスタートする」ということの間に、大きな溝が有るということ。
これが、Twitter内で書いた「マネジャー昇格までならば、200億年の道のりに見えるが、実はみんなある所でどこでもドアを使っている」ということ。
ここでは便宜上「マネジャー昇格までならば」と書いたが、実際にスタッフから見て遠くに見える「マネジャー」というのは、単に職位を名乗っているだけでなく、プロジェクトマネジメントが務まっている人のことを指すと思う。そのため、これは「マネジャーが務まるまでならば」と言い換えた方が良いと思う。
ファームのキャリアの中で、脱落者が最も多いのはこの時期ではないかと思う。
(正確には、入社数年のアソシエイト時期で辞める人が多いとは思うが、これは「脱落」よりも「合わない」とか「思っていたのと違う」というようなものだと思うので)
基本的にマネジャーの少なくとも前半時期の仕事の大半は、アソシエイトの仕事の延長線上に有ると思う。必要な作業を特定する、組み立てる、といったことが中心であり、これらはアソシエイトでも優秀であれば当然にやっていること。
しかし、決定的に違う点が有り、それらは「気付き」のようなものが必要になって来ると思う。気付きさえすればあっという間に越えられるし、気付かなければいつまで経っても越えられない。その「気付き」が「どこでもドア」と表現したもの。
要するに、スタッフとして着実に歩んでいるだけでは、マネジャーには辿り着かない、と考えている。
では、何が違うのか。
一つは以前に下記のブログで書いた点。
要するに、顧客を見て仕事をし、自分自身で目標・ゴールを設定できるのか否か。
特に「顧客が求める水準を『感じられる』ようになる」という点。ここの感覚に気付けるかどうかだと考えている。
加えてもう一点。
思考のタイプは大きく「トップダウン型」と「ボトムアップ型」に分かれると思っている。大きな違いは、トップダウン型は「抽象的認識→具体的理解」という思考の進め方をし、ボトムアップ型は「具体的認識→抽象的理解」という進め方をしていると思う。
これは持って生まれたものなのか、教育の過程で出来上がった「癖」なのかは分からないが、結構はっきりと分かれる。
この両者については優劣というものではなく、単に特性の違いだと感じている。
スタッフ(特にアナリスト)時期について言えば、ボトムアップ型の方が評価が高い人の方が多いのではないかと思う。それは、仕事の内容が積み上げ的に検証をすることが中心だから。
加えて、私自身が典型的なトップダウン型なので感じるのだが、このタイプは「ザックリと分かった」段階で「飽きる」。そのため、その後の検証作業が退屈(苦痛)に感じる。トップダウン型のタイプは若手の頃、「詰めが甘い」という指導を受け続ける・・・というのは私だけの経験だろうか?
しかし、「マネジャー」という仕事、もっと言えば「コンサルタント」という仕事を進める上では、どこかのタイミングでトップダウン型の思考に切り替える必要が有る。
コンサルタントの仕事の進め方は基本的に、抽象的に捉え、具体的に詰める、という形になると思う。そして、マネジャーになると前者の役割の比重が高くなる。
見ていると、ボトムアップ型思考の人はこの切り替えに結構苦労するケースが多い。
そして、スタッフから見てマネジャーとの距離感を感じるのは、この部分の方が大きいように感じる。
(「顧客が求める水準を『感じられる』ようになる」ということは、スタッフのうちはそもそも何も感じないように思うので)
トップダウン型思考のスタッフから見たマネジャーとの距離感は、パッと思い付きでの仮説の質の差になると思う。これは殆どが経験で解決する。
実際には、単に経験量を積んでいれば解決できるものではなく、以前にブログかTwitterで書いた「しゃぶり尽くす」ようなことをすることは必要なのだが、時間の問題ということの方が多いと思う。
一方でボトムアップ型思考のスタッフから見たマネジャーとの距離感は、トップダウン型のスタッフが感じる仮説の質の差に加えて、そもそも「仮説を捻り出せること」も差と感じるだろうし、仕事の組み立て方も大きく違いを感じると思う。
つまり、圧倒的に距離感を大きく感じるのではないかと思う。
そして、この距離感は、「トップダウン型」への転換が出来ない限り、一向に縮まらないと思う。
「では、どのようにすれば」ということまで書ければ良いのだが、私はこの点について全くアドバイスできない。前述のように私が典型的なトップダウン型なので、そもそも「なぜできないのか」が実は分からない。
ボトムアップ型だった先輩の話を聞くのが良いと思う。
とは言え、これまで幾人ものこの転換を果たしたスタッフを見た限りでは
- 「自分がボトムアップ型であり、それだと限界が来る(来ている)」という強い課題認識を持ち、思考の組み立て方についてかなりの試行錯誤をしている
- そうすると、ある日を境にいきなり変わる
というような感じで進むと感じている。
「ある日を境に」というのは、本当に「ある日を境に」であり、あるスタッフは会議中にいきなり「あれ、小暮(仮名)さん、どう考えれば良いのか分かりました」と言い出し、その時を境に全く別人のようになったということが有った。
恐らくこれは、「自然に変わる」というものではなく、かなり強く意識しなければ見付けられない「気付き」なのだと思う。とは言え、一度気付けば、本当に一気に移動できるものだとも思う。
コンサルになってすぐには、マネジャーとの距離感はよく分からないと思う。
朧げに「この辺が違う」ということを理解し、それが「辿り着けない位に遠い」ということを感じたとしたら、それはコンサルタントとして一つ大きく成長したということだと思う。
けれども、「どこでもドア」を見付けさえすれば、実は大した距離ではない。但し、「どこでもドアを見付ける」ということを意識しないと、いつまで経っても見付からないと思う。
「ボトムアップ型で苦労し、トップダウン型を身に付けた」人が、コンサルタントとして最も強いのではないかと感じている。
過去の成果物を読み漁り、求められている思考の細かさについての感覚を早めに掴む、という点を最も意識しました。
いつも楽しく拝見させていただいております。
詰めが甘いとよく言われ、概要を掴むと飽きてしまいます。自分でもなぜそうなってしまうのか悩んでましたが、思考の癖というのは自分の中では新しい示唆でした。
ボトムアップ型の思考を身に付けたいと考えておりますが、ボトムアップ型の思考を身に付けようと小暮(仮)様で何か取り組まれたことはあるのでしょうか? (例えば意識的に自問したことなど)
あれば教えてください!