早くに昇進することの是非

育成の話をする際に議論をするポイントになり易いのが「早くに昇進することが良いのか否か」ということ。

この場合、例えば目安4年の職位に対して3年で上がる(1年スキップする)、というようなものではなく、2年、場合によっては1年で上げることが良いのか、というようなレベルのもの。

 

コンサル業界は年齢や経験などに関係無く、能力が有る人が早くに昇進する。

これは確かに正しいのだが、補足しなければいけないのは「能力が有る」に「組織内で相対的に」という言葉を頭に付ける必要が有るということ。

 

昇進判断をする際には本来、例えばマネジャー昇進であれば「マネジャーとして期待される役割を果たすことが出来るのか」ということが問われる。その基準に照らして昇進の可否を判断する。

しかし実態としては他に2つの大きな要素が影響していると思う。それは

  • 今の職位で何年経ったのか
  • 横並びで見てどうなのか

ということ。

 

「年齢や経験などに関係無く」と書いたが、それぞれの職位で大体何年程度、という目安のようなものが各ファームに有ると思う。

勿論、これは目安でしかないはずのものなのだが、実態としては、「昇進に完全に適するとは言わないが、さすがに随分とこの職位に留まっているし」という理由で上がるケースが発生する。特に「使い勝手が良い」スタッフの場合には辞められても困るし、というような心理が働く。

これに絡んで、「横並び」での議論が始まる。

例えばある人を昇進させる際に「新卒同期だから、彼を上げるのならこの人も上げないと」というような議論は結構多い。

 

これにより、職位に見合わない(足りない)昇進は結構生じ易い。

これは特に好況期には運営側としてもメリットが有る。顧客への提案の際、マネジャーとしての能力が無い人であっても「マネジャーを1名100%でアサインします」と言えば、マネジャー1名100%分のフィーを要求し易い。

私はアサイン構成と全く無関係にフィーを決めるのだが、特にコンペの際(かつコンサルを使い慣れている会社の場合)は、「どの職位を何名、何%で稼働させるのか」を問われるケースも少なくない。それにより金額が高い/低いを評されたりする。

 

そして、これに絡んで生じるのが「物凄く早い昇進」をする人。

職位に見合わない人を昇進させると、横並びで見て「職位に見合っている人」を更に昇進させないとおかしくなる。この辺まで来ると、元々の「職位で期待される役割」は大きく崩れ、要求水準が著しく低下する。

結果として、組織内で相対的に見て「優秀」と評される人は、職位が極めて早くに上がるという状態になる。

 

 

で、本題は、このように「職位が極めて早くに上がる」ということが、その本人にとって良いのか否か。

 

私は、これは望ましくない(避けた方が良い)と考えている。

 

トップティアのファームであり、かつ、しっかりとした評価がされた結果として昇進しているのであれば問題は少ないと思う。

また、早い段階で他業界に転職することを考えており、コンサルファームをあくまでも「ステップアップ」の手段と考えている場合にはむしろ望ましいと考えている。これは早いうちに箔を付けて転職した方が良い。

 

私が望ましくないと考えるのは、前提として、トップティアのファームではなく、かつ、戦略コンサルタントとして生きて行きたい、と考えた場合。

 

先日、下記のような記事を書いた。

 

takashi-kogure.hatenablog.com

 

この中で、マネジャーになるまでに「強靭な足腰」と「幅広い種類の案件の経験」という2つ(+「『本物』を知る」)をマネジャーになるまでにすべきと書いた。

早い昇進をする人は、この両面でやや不安が残るケースが多い。

後者はそもそも経験の問題なので当然だが、前者も同様。

優秀な人は往々にして、早い段階から「一つ上の仕事」を任される。これは良い面も有るのだが、一方で基本の「型」が不十分になるケースも多い。

この観点から、アナリスト、アソシエイトは一定程度の時間を過ごした方が良いし、マネジャーの時期も別に身に付けるべき要素が有るので同様と考える。

(ただ時間を過ごせば良いのではないことは当然だが)

 

とは言え、マネジャーまでは一気に駆け上がっても何とかなるとは思う。

それは、マネジャーまでは後ろにパートナーが要るから。また、マネジャーになってもスタッフで身に付けるべき経験を積むことは難しいが不可能ではない。

実際に私もマネジャーになってから特に「幅広い種類の案件の経験」を積んだ。

 

しかし、越えることに気を付けなくてはいけないのは「数字責任を負う立場」への溝。ファームによってマネジャーから要求される所も有れば、パートナーだけが負う所も有るが、ここへの昇進は相当に気を付けないといけない。

 

この立場になると、市場基準で見た時の自分の能力水準が問われる。それまでは社内での競争だったが、ここからはゲームが大きく変わる。

最初のうちはファームの名前で舞い込んで来る仕事を取ったり、力の有るパートナーが取って来る案件で数字を分けて貰ったりすることで数字が上がったりする。しかし、早かれ遅かれ「自分で稼ぐ」ことが求められる局面が来る。

この時に、市場で見た自分の競争力が露呈する。

そして、「組織内で相対的に見て能力が高い」故に物凄い速さで昇進した人は、この段階で市場での水準とのミスマッチに気付く。

 

そもそも、仮に「戦略コンサルタント」をやっていてマネジャーから数字を求められるのだとすると、すぐにでもそのファームは辞めた方が良いと思っている。

本物の「戦略コンサルタント」になるためには、マネジャーまでは数字は全く意識しなくて済む環境でなければ厳しいと思っている(し、全うな戦略系ファームでマネジャーから数字を要求する所は無いはず)。

もう少し言えば、「戦略コンサルタント」としての真の能力を身に付けるためには、「数字を意識しない状態でどれだけ経験を積めるのか」が大きく影響すると思っている。ファーム内で生きていて数字を背負うと、どうしてもジレンマが生じる。

 

私が有難かったのは、前職で営業して一定程度の数字を稼ぐ立場になったのだが、ファーム事情が有ってシビアな「数字責任」を負わない状態で少しやらせて貰えた。(正確に言えば、負う立場へのオファーを受けて辞めたのだが・・・申し訳ない)

「営業する」ということと「数字責任を負う」ということは全く意味が異なる。

営業することは勉強になるが、評価が数字(営業成績)で決まるという状態はプロフェッショナルたる戦略コンサルタントとしての邪魔になる。

 

そのため、「プロフェッショナルたる戦略コンサルタントとは何なのかが明確に見えた」と思えるまでは、数字責任は負わない方が良い。

 

マネジャーでは、アソシエイトまでに出来ていなかったこと(幅広い経験等)が残っていれば、苦労してでもそこを埋めるのが第一。

その上で、数字責任を負わず「戦略コンサルタントとしてのあるべき論」で議論できる立場、かつ、しっかりとしたパートナーのサポートを受けながら、様々なタイプの企業での臨床経験を数多く積む。ここに注力すべき。(先日の記事の中での「アプローチ方法」の部分)

ここでの臨床経験の差が、結局のところ「戦略コンサルタント」としての力量の差になって現れると思っている。

 

 

若いうちは早くに昇進したいと思うかも知れない。

しかし、歳を重ねて振り返ると、若いうちにしか経験出来ないことが多々有ると強く感じる。若い頃には「無駄」だと思ったことが、歳を取って振り返ると非常に「貴重な時間」だったと感じるような。

(大学受験での浪人や留年経験などもそうかも知れない:私はストレートで社会に出てしまったのだが、今振り返るともう少し無駄な時間を過ごしておきたかった)

 

 

ちなみに、ファームでのキャリアの中で輝く時期というのは2つ。

  • マネジャーへの昇進がもう確実と言われる状態でのアソシエイト最終段階
  • 数字責任を負わない中で最も高い立場

この時期は本当に貴重。許されるなら「しっかりとした足固めをしたいので昇進を1年遅らせて欲しい」と言ってでも延ばした方が良いと思っている。

これは、その時期には有り難さを感じずに通過してしまう人も多いと思うので、しっかりと噛み締めて過ごして欲しいと思う。

2件のコメント

  1. Mizutaniさん
    この場でそのご質問にお答えすることは避けたいと思います。
    様々な情報を基に、ご自身で判断頂ければと思います。

  2. 記事、いつも勉強させていただいております。
    これまで出てきているトップティアのコンサルファームとは、マッキンゼー、BCG、ベインを指しているという理解でよろしいでしょうか?

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