求められている思考の細かさを理解する

先日書いた下記の記事について、コメント欄でご質問を頂いた内容に絡んで。

takashi-kogure.hatenablog.com

 

記事の中で、ボトムアップ型はマネジャーになる過程で思考の型をトップダウン型に切り替える必要が有るということを書いた。

これだけ見ると、トップダウン型は苦労無くマネジャーへの歩みを進められるように感じられるかも知れないが、実際には、コンサルタントになった当初(特にアナリスト時代)にトップダウン型の方が苦労する場合が多いように感じる。

 

記事内で書いた通り、私は「詰めが甘い」という指導を受け続けたのだが、特にアナリストとして求められているのは抽象的に物事を捉えるよりも、具体的に理解する・思考を詰めて行くこと。この点についてはボトムアップ型の方が適合し易い。

 

実際には、トップダウン型だから、ボトムアップ型だから、というものでは本来はない。これは訓練次第だと思う。

しかし、あくまでも傾向としてだが、トップダウン型の方が「飽きる」と言うか、「これ以上細かく考えることの必要性を感じない」と思ってしまうことが多い。

 

そして、これを解決するために、もう少し言えば「コンサルファームのアナリストとしてしっかりとしたスタートを切るために」は、求められている思考の細かさを理解することが必要と考えている。

 

書いたように、トップダウン型だから詰めが甘い、というわけではなく、ボトムアップ型の人でも入社時の詰めの甘さは大差無いと感じている。

全体的に、「ここまで調べる・理解する・思考する」というレベル感についての理解が足りない。粒度が甘い。

コンサルタントには「思考の深さ」が求められるが、アソシエイト位まではこの「深さ」は「理解の細かさ」に概ね比例すると考えている。

細かく理解すれば細かく思考することができ、それが思考の深さに繋がる。

 

「求められている思考の細かさ」

 

これは感覚的に身に付けるものだと思う。

マネジャーになると、相手の認識と実体との乖離を踏まえ、どこを細かく見るのか、といった、個々の対象に応じた思考の細かさの調整みたいなものが必要になる。

(参考:「『現実』と『認識』の乖離」

しかし、これを特にアナリスト段階で行うのは無理。

そのため、取り敢えず向き合う対象については、一定の細かさで調べる・理解する・思考するということが必要になる。

そのレベル感を掴むこと。

 

このためには、過去の成果物を漁ることが一番。

しかも、最終成果物だけでなく、検討過程の資料を見る方が良い場合が多い。最終成果物だと(しっかりとした上位者がまとめるものほど)細かな部分を割愛しがち。

調査時の収集情報の内容、収支予測のモデルの組み方・パラメータの置き方、社内の実態調査での記述レベル等々、ここまで見た上で、抽象的な認識に落とし込む必要が有るのか、という感覚を掴むと良い。

 

とは言え、結局、最後はプロジェクト内での指導に尽きると思う。

「考えが甘い」と一蹴される場合の大多数が、この「細かさ」の問題のはず。どれだけリアルに物事を捉えるのか、様々な例外事象まで考慮に含めるのか。

放っておくと細かくなり過ぎる。そのため、指導を受けながら感覚を掴むことが必要。

 

しかし、最後まで「細かさ」が見えるのも良くない。

最後に思考を逆転させ、抽象的認識→具体的理解からもう一度、抽象的認識に戻す。 

細かく考えた上での抽象的な提言には自ずと「重み」が生まれるが、ザックリと考えただけでの抽象的な提言は「軽い」ものに留まる。

 

まずは細かく考えることを身に付ける。

そして、どこかのタイミングで抽象的認識を先行させる。

これが必要。

1件のコメント

  1. 質問をさせて頂いた者です。
    返信と記事拝見させていただきました。大変勉強になります。
    まずは対象を細かく捉えること。どの程度細かく捉えるかは、過去の資料等から合格ラインを見積もり感覚的に理解できるようにするということなんですね。
    現在都道府県の職員として働いており、政策立案や方々へレクチャーする機会が多々ありますが、何か自身の考えの薄さを感じておりました。対象の理解の粒度が粗かったのかと記事をみて感じました。
    これからも記事楽しみにしております。
    また勝手ながら質問等させていただければと思います。

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